458: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:37:27.35 ID:47+h4pm/0
竜『気が付くと我は初め地面を這い蹲っていた』
学者「ふむ、その頃は四肢が発達していなかったのか?」
竜『そもそも四肢などなかった。我は身を捻りながらでしか動けなかった』
459: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:39:18.06 ID:47+h4pm/0
竜『目覚める度に我の体には微々たる変化が起こっていた。死を繰り返す内に以前は生えていなかった脚が生まれ、腕が生まれ尾が生まれていった。初めは外部より与えられる暴力に蹂躙されるだけだったが少しずつ逃げおおせることが出来るようになっていった。まあ時間の問題だったのだが』
学者「ふむ、……それが外部からエネルギーを得ることのない者が成長する方法というわけか。いやこれほどの変化であれば進化か」
竜『それから年月が経ち、ある程度今の姿に近づいた頃……ある日人間共に見つかってしまった、人間に発見されるのは今まで何度もあったのだがその時は違った』
460: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:40:52.92 ID:47+h4pm/0
竜『さて学者、この後彼らはどうしたと思う?』
学者「……苦境の中で献上品を捧げているにも関わらず願いが叶わなければ彼らの中には恐らく焦りや不満が生まれていっただろうな。そしてその負の感情の行き先は」
竜『うむ、察しの通りだ。彼らはいつしか正反対のことを口にするようになった。我は実は神ではなくこの村を苦しめる悪魔なのではないかとな。神と崇めたり悪魔と罵ったりと忙しい奴らだ』
461: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:43:30.42 ID:47+h4pm/0
学者「まあ赤の他人、それも生者でない者のことなどどうでもいい。その後貴様はどうしたのだ?」
竜『我は今まで以上に人間を避けるようになった。日に日に険しい土地へと身を寄せた。しかし、どんな辺境の地に隠れ潜もうが必ず奴らが来てしまう。ありえない偶然が重なり奴らとの邂逅が果たされてしまうのだ』
学者「ほう、なら私が貴様と出会ったのも運命の赤い糸という奴で繋がれていたのかもしれんな!」
462: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:45:00.60 ID:47+h4pm/0
学者「貴様の人間に対する価値観には幾ばくか興味がそそられるが話が逸れているな。軌道修正を要求する」
竜『ああ、といっても語ることなどもう殆どない。そうして我は可能な限り人の目を避け、この地に身を置いたのだ。恐らく数百年程は見つからなかったためこの地なら、と思っていたのだが…』
学者「いやあ残念だったな、はっはっは」
463: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:47:55.56 ID:47+h4pm/0
学者「ふう、さてそろそろ床につくとするか」モゾモゾ
竜『やっとか、貴様が一々話しかけてくるために我は著しく疲れ果てたぞ』
学者「貴様は無愛想ながら律儀に答えを返してくれるからな、恋人にするなら最適だ」
464: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:49:20.76 ID:47+h4pm/0
竜『ふむ、書物を積めばわかるだろうか』
学者「こればかりは経験を積まねば難しいだろうな」
竜『学者貴様は恋の経験はあるのか? あるなら語ってみろ』
465: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:50:50.83 ID:47+h4pm/0
学者「…とこのような甘く切なくメランコリーな感情を恋というのだ、わかったか!?」
竜『うむ、さっぱりわからん』
学者「ああ正直話を聞いている間の貴様の表情で薄々察しておったわ! 欠伸が2桁を越えたあたりで私の話術の自信は霧散した!」
466: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:51:28.52 ID:47+h4pm/0
―夜―
学者「ぐがああああああぁぁ…」グビー
竜『…五月蝿くて眠れん』
467: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:52:32.17 ID:47+h4pm/0
―1ヵ月後―
学者「ふーよっこらせ」ドサドサッ
竜『配達ご苦労。帰っていいぞ』
468: ◆yJ9Y64R876[saga]
2014/01/19(日) 22:53:29.04 ID:47+h4pm/0
学者「貴様は己が何者なのかを知りたくはないか?」
竜『……! それが貴様にはわかると言うのか』
学者「それを知るための実験だ」
933Res/559.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。