978:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:20:51.22 ID:e6Uk7Fse0
2番目に出発する班として教室を追い出されて廊下を歩いている時に、鷹城雪美(女子九番)はプログラムに参加させられ今から戦場へと出なければならないという状況とは思えない程に落ち着いた声で、そう言った。
もちろんそれはその後ろを歩いていた松栄錬(男子九番)も同意見だった。
容姿は地味だし場を明るくできるような性格でもないし、運動はからっきし駄目だし、だからといって勉強ができるかと言われるとどんなに頑張っても中の上程度にしかできないし――たまに生きていて申し訳ない気分にさえなってしまう錬だが、だからといって死にたいと思ったことは一度もないし、今ももちろん死にたくない。
地道に努力を続ければ行く行くは祖父が現在会長を務めている鉄鋼会社に就職して、将来的にはそれなりに上の地位に就くだろう。
979:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:21:41.96 ID:e6Uk7Fse0
雪美と賢吾の間にどのような関係があるのかはわからない――親同士が古くからの付き合いだという関係で、お互い話をする関係だ、ということしか聞いていない――が、雪美と賢吾の力関係ははっきりとわかる。
賢吾は、雪美には意見できないのだ。
「死にたくないなら、他の班の全員に死んでもらわないといけないでしょう?
ねえ季莉ちゃん…あたし、何か、間違ってるかしら?」
980:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:22:32.97 ID:e6Uk7Fse0
雪美が指差した先にいるのは、悠希の亡骸を抱えて泣きじゃくっている、クラスで2番目に小柄な女の子、山本真子(女子十九番)。
他の3人が死してなお生きているということは、真子がこの班のリーダーらしい。
真子を見、手に握られた金槌に視線を移し――錬は呻き声を上げた。
つまり、雪美はこう言ったのだ、「山本さんを、金槌で殴り殺してちょうだい」と。
981:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:24:19.13 ID:e6Uk7Fse0
もちろん殺人なんてしたくない、けれど、拒否すれば雪美はきっと引き金を絞る――それはほんの一滴の情けもなく、あっさりと。
そんなこと、絶対に、させてたまるか。
僕にとって、季莉の命は、何よりも重いんだ…!!
982:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:24:50.55 ID:e6Uk7Fse0
突如前方に現れた、S
983:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:25:17.23 ID:e6Uk7Fse0
大人しい目立たない女の子だと思っていた雪美が垣間見せた裏の顔にも、それに最初から気付き(雪美の話しぶりから察するに、恐らく華那以外は気付いていなかったのだろう)いつも警戒していた華那にも驚かされた。
勉強だけでなく、華那は本当に頭が良く周りを見ているのだと実感させられた。
そんな華那を、ここで失うわけにはいかない。
プログラムだなんてとんでもないし、やりたくもないが、死にたくもない。
984:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:25:44.24 ID:e6Uk7Fse0
賢吾と季莉さえ撒くことができれば、運動能力の低い雪美と錬は問題ではない。
やればできるはずだ。
「逃がすか…ッ!!」
985:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:26:18.96 ID:e6Uk7Fse0
季莉の鎌が振り下ろされる刹那、悠希は真子を手離して振り返り、季莉の攻撃を受け止めようと手を伸ばしたがそれは叶わず、鎌の刃が悠希の首に突き刺さった。
鮮血を撒き散らし、悠希は倒れた。
親友の死を目の当たりにしたのは、田中顕昌(男子十一番)に続いて2人目だ。
「悠希…ッ!!」
986:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:27:19.27 ID:e6Uk7Fse0
文句の1つでも言ってやろうと思ったが、口を開いて出たのは血液と呼気だけだった。
その様子を見た雪美が、華那の頭を撫でた。
「可哀想に…痛いのに苦しいのに[ピーーー]ないなんて…
賢吾…華那ちゃんを、助けてあげてくれる?」
987:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:28:09.80 ID:e6Uk7Fse0
鷹城雪美(女子九番)は、少し大人しめで目立たないごくごく普通の女の子――と周りから見られるように生活してきた。
雪美の実家は少々という修飾語がとても似合わない程に特殊だ。
何を隠そう、雪美の家は、関東一円でその筋の者からは恐れられている極道“鷹城組”。
祖父が組長を務めており、雪美も家を出入りする祖父の部下たちからは“お嬢”と呼ばれ祭り上げられている。
988:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/14(月) 20:28:46.18 ID:e6Uk7Fse0
しかし、華那だけは違った。
華那は初めて声を掛けたあの日以来、一度たりとも雪美に対して心を開いていない。
いつも一緒にいるように周りからは見えるだろうけれども、雪美と華那が2人きりになることは殆どなかったし(例えば2人組を作りなさい、と言われると、さり気なく華那は雪美を避けるのだ。もっとも、避けなくとも古都美が雪美にべったりなので、自然と雪美と古都美が組み、華那と千世が組むのが自然の流れになっていたのだけれど)、会話も交わしているのだけれど、華那の声には警戒心が見て取れた。
和を乱すことを良しとしない華那は抱く警戒心を華那なりに隠そうとしていたのだろうけれども、雪美は人の接し方には敏感なのでそれを感じることができたし、華那は華那で雪美が心の中に隠している黒く渦巻く感情を感じていたと思う。
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