278:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/23(土) 06:40:07.50 ID:Yq2Noa/q0
僕等は、只、従うしかなかった。 運命には逆らえなかった。 けれど、何もせずにいられなかった。 僕等は、大人に頼ったんだ。
「おい、葵 一成とか言ったな。俺達全員の病気治してくれ」
甘野 大和は葵 一成にそう言った。
だが、一成は首を横に振るだけだった。
「何でっ…」
「私も、全員の病気を治療すると医者のお偉いさんに言いました。昨日「全員は駄目だ」と言われました」
月下 香介と相野 輝己が絶望したような顔をした。
静木 青が「もしかして、あと3人死んだら
他の5人は助けてやってもいいって言われませんでした?」と
一成にそう聞いた。
それを、聞いて、木元 拓と中居 螢太と他、藍瀬 輝々が
驚いたような顔をした。
「えっ、馬路?!」
「誰が!!誰が死ぬんだよ!」
「やだ!他の3人も救えよ!」
ギャ―ギャ―と喚く7人に一成は
「ご命令に従うしかないのです」と
悔しそうに言うしかなかった。
逸れを聞き、7人は黙った。
「…輝丹」
輝々はそう一言呟いて、葵 輝丹の病室へ行こうとした。
そして、輝々は呆然と立ち尽くしていた。
青と拓は不思議に思って、廊下を見回した。
すると、二人共、死んだように硬直していた。
「どうした?」
螢太が拓の肩を掴んでひょこっと廊下を見ると
驚いたような顔を見せた。
其処には、輝丹の姿が在った。
だが、輝丹は息を切らしている。
今にも倒れそうな勢いだった。
「輝丹?!」
輝々が輝丹の肩を掴んだ。
其処で一成が驚いた顔を見せる。
「貴方は未だ、寝てなくてはなりません。点滴も抜いたら危険な状態になるんですよ?一刻も早く寝てなければ…」
「五月蝿い、愚民…」
一成の言葉を、輝丹は切って捨てた。
全員、信じられないような目で輝丹を観る。
それに、輝丹はゆっくりとこう言った。
「…最期まで皆と一緒にいたい。これは俺の我侭だと思って欲しい。今、逝ったって…後悔はしない。俺は一人じゃないと思えるだけで良いんだ…だから、皆の傍に、置かせて欲しい…」
今度は、本音をちゃんと言ってもらえた。
皆、輝丹の言葉に、涙を流した。
何故なら、輝丹がきつそうな顔をして
今にも逝ってしまいそうだったから。
だけど、輝丹は死を受け止めた。
何で、もっと、早く気付かなかったんだろう。
輝丹は、前から強かったのに。
「あ、おなかすいた…」
大和が泣きながら笑った。
それに、皆が苦笑する。
「じゃぁ、朝食作るよ」
香介と輝己が台所に行こうと歩いてく。
だが、二人共、涙が溢れていた。
「輝丹、行こう?」
輝々が声をかける。
それに輝丹が「そうだな」と何時ものように返した。
青と拓と螢太が悲しそうな目で二人を見ていた。
「…こーすけ。こーに死んじゃうの?」
輝己が泣きそうな顔で香介を見つめていた。
香介は只「あの様子じゃ、死にそうだな…」と
辛そうに返すしかなかった。
輝己は覚悟した所為か真剣に語った。
「こーにが死んじゃったらあと2人となるんだよね…それ、凄くいやだ。皆、生きて欲しいよ。何で、全員じゃ、駄目なのかな。大人って残酷すぎるよ…!」
「…悪い大人もいれば良い大人もいる…か」
叫ぶ輝己に香介はそう呟いた。
「…和生の父さん母さんって優しかったよな」
「…うん」
「俺の父さんと大違いで、ホント、羨ましかった」
「…うん」
「…あ、ごめんな、輝己両親居ないんだろ」
「…ううん、良いよ。全然大丈夫」
輝己はそう言って、笑った。 それにつられて、香介も笑った。 「…無理してない?輝丹」 青が輝丹に声をかけた。 先程から輝丹が辛そうにしていたので余計、心配になったのだ。 だが、輝丹は首を横に振り、「全然。静木は心配しすぎ」と 平気そうな顔をし、青にそう言った。 「そう。なら、いいけど…」 しかし、青には無理してるようにしか見えなかった。 ふと、青はもう一度、輝丹を見た。 心臓が止まった気がして、青は直ぐ輝丹のほうに近づいた。 輝丹の隣に座っていた輝々は驚き 「青、どうした?」と話し掛けたが返事できなかった。 「輝丹!!やっぱ、寝といた方が良いよ!全然大丈夫じゃないでしょ!!」 そう、輝丹の手が微かだが、震えていたのだ。 それをもう片手で、輝丹は抑え込んでいた。 腕の点滴を抜いた後のちらっと見えた青痣が痛々しかった。 「朝食できたよーv」 いつも通りの輝己が笑顔で朝食を運んだ。 そして、いつも通りの「いただきます」という声が食卓に響いた。 青木 はると川瀬 和生はもう居ないけれど明るい声が食卓を響かせた。 そして、朝食も終わり、大部屋で、彼等は雑談していた。 しかし、輝丹は居なかった。 あの、拓も居なかった。 「…どうした?輝丹」 ベランダの所に拓と輝丹が居た。 輝丹が俯いて、こう言った。 「木元 拓。だいぶ、強くなったな。」 続けて言った。 「木元なら、落ち着いて俺みたいに対処も出来る。だから、頑張れ。俺、木元達を見守ってる。」 其の言葉と共に、拓は泣いた。 泣き止まない拓に輝丹は気付いた。 「…何故、泣くんだ」 輝丹はゆっくり拓の頭を撫でた。 初めて輝丹に頭を撫でられた拓は耐え切れずに輝丹の服を掴んだ。 掴まれて、輝丹はきょとんと首を傾げた。 「…輝丹……っ」 どうして、お前が先に死ぬんだよ。 俺は、俺はこんなの認めない! 拓はそのまま、泣き続けた。 泣き続ける拓に、輝丹は拓を見た。 今までと違う、優しい目で。 だが、口元は、笑みを浮かべなかったが それでも、拓にとって優しい輝丹であった。 「今まで、ありがとう」 輝丹の声は、何処か悲しく切なかった。
287Res/306.04 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。