過去ログ - フィアンマ「助けてくれると嬉しいのだが」トール「あん?」
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◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2014/05/06(火) 22:07:10.46 ID:2l3uVMit0
傷口の止血をして、振り返った。
伸ばされた手は震え、彼の表情は泣きそうだった。
咄嗟に優先したのは、当然ながら怪我をした方の彼だったけれど。
目の前の彼にも、伝えなければならないことがある。
「……るのか」
「……何を」
「俺を、恨んでるんだろ…? いいよ、罵れよ」
「………」
「お前を救えなかった俺は、お前の味方なんかじゃなかった。
どれだけ力を手に入れようが、お前を守れなかった時点で恋人失格だ。
……恨んでるんだろ、俺を。無能だって、役立たずって、罵ってくれていい」
彼は今、自分が泣いていることに気がついているだろうか。
「お前に嘘をついた。沢山嘘をついて騙した。
あれだけ夢を見せて、散々語っておいて、俺はフィアンマを裏切ったんだ。
わかってる。………だから、嫌いになられたって、…仕方、ないよな」
でも、本当に好きだったんだ。
娘も含めて守りたいと、心の底から思っていたんだ。
信じてくれ。信じてくれ、頼む、信じて欲しい。
力なく懺悔でもするかのように頭を垂れる彼に、先程までの狂気は見当たらなかった。
フィアンマは手を伸ばし、彼の長い前髪と、首元に触れた。
「……、トールは俺様を助けに来てくれたんだろう?
結果じゃない。過程が大切だと教えてくれたのは、紛れもなくお前だ。
嘘をつかせて、すまなかった。お前を恨んだことなんて、一度もない。
俺様は、最期まで幸せだった。傍に居てくれたら、それだけで満足だった。
俺様が居なくなっても、死んでも、それがどんなに悲惨な悲劇だったとしても。
それら全てを飲み干して、自分の人生を生きて欲しかった。俺様の望みは、きっとそれだけだったよ」
三年後の、十年前の『あの日』。
「助けようとしてくれて、嬉しかった」
彼女が、口にすることの出来なかった言葉だった。
一緒に生きられただけで幸せだったのだから、終わりは終わりとして受け入れる。
とても悲しいことだとしても、たった一度で終わってしまうから、人生は尊い。
「だが」
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