291: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:00:49.85 ID:cp6WeGbSo
・・・・・・
エンジニアリングルームへ顔を出すと、部屋の奥でコンソールをいじっている複数の技術者が凛を視認した。
292: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:02:03.34 ID:cp6WeGbSo
でもなんで、ちひろさんはこんな部屋に来いって云ったんだろう……
凛がそう不思議に思いながらポートに装着すると、
「――凛ちゃん、お待たせ」
293: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:02:44.02 ID:cp6WeGbSo
「――ごめんね、驚かせるつもりはなかったんだけど」
振り返った凛の、その大仰な驚きぶりに、ちひろは苦笑い。
「――それで、どうしたの? 訊きたいこと、だなんて。あんな表情をして」
294: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:04:24.86 ID:cp6WeGbSo
――
二人っきりになったことを確認した凛は、それでも尚、たっぷりと時間を取って、まっすぐちひろを見た。
295: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:05:14.99 ID:cp6WeGbSo
ちひろは、たっぷり十秒ほど瞼をぱちぱちと屡叩かせ、凛の言葉の意味を計りかねている。
「――……一体どうしたの、何か悪い夢でも見たの?」
そう云って、小首を傾げた。
296: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:06:31.68 ID:cp6WeGbSo
しかし凛は、鋭い視線を変えない。
「ちひろさん、私ね、その機関―カラクリ―を知りたいんだ」
「――……から、くり?」
297: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:07:15.19 ID:cp6WeGbSo
慌てる様子のちひろと対照的に、凛は首をゆっくり横に振る。美しい黒髪が、若干のディレイを伴って揺れた。
国会図書館で複写した過去のタレント銘鑑。
そのコピー紙を鞄から取り出して、身体の左横にあるコンソールへ、ぽん、と放った。
298: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:08:16.46 ID:cp6WeGbSo
凛はそのまま畳み掛けた。
「私の国民識別IDの内部に、H070810っていうデータも埋め込まれてた。これ、平成7年……つまり1995年8月10日って意味でしょ?」
左手で、ひらひらと、IDカードを揺らす。
299: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:09:46.48 ID:cp6WeGbSo
静寂が、二人を包む。
眼力鋭くちひろを見る凛。
しばしの沈黙ののち、ちひろがゆっくりと口を動かした。
300: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:10:45.37 ID:cp6WeGbSo
「きっかけなら色々あるよ。一週間ほどプライベートの記憶がなかったり、買った覚えのないお酒があったり、ポータルの映像にデジャヴや妙なコメントが書かれていたり」
それらは、個々ではほとんど気にかけず流してしまうであろう些細なものだが――
「数々の違和が重合して、大きな疑念になったの。その中でも一番の要因は、加蓮と私の記憶に齟齬が出たことかな」
301: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2013/11/04(月) 01:11:21.47 ID:cp6WeGbSo
あの日は誤ってアルコールを飲んでしまって、その対処のせいで出社が予定より遅れた。
つまり、あのとき、凛がいつも通りに、スケジュール通りに出社していたら、加蓮と鉢合わせすることはなかったはずだ。
そのまま、加蓮は凛と会話することなくNEURONetに接続し、記憶の整理が行なわれていたことだろう。
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