過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:25:57.38 ID:foU1KJOC0
 だが、それを抜きにしても、昼間のこんな時間帯に、島で数台しか営業していないタクシーが、先ほど店の前を横切っていったジープを追うように走って行くというのは、
「そうそうありえることではない……」
 のである。しかも、島の中央部へ向かうこの先には人気のない山林が広がるばかりなのだ。
 こうなると、娘の行動は早い。
「おばさん、お勘定ここに置いておきますね!」
「ちょっとちょっと、こんなに貰えないよ」
「いいから……そのかわり、ちょっとカブを貸してください」
「そのくらい、お安いごようだけど……」
「ありがとう、すぐに返しますね」
 こうして娘は、たっぷりとこころづけの含まれた勘定を縁台に残し、店の脇へ停められたカブへ乗り移ると、すぐさまタクシーの後を追っていったのである。
「何かあったのかしら……大丈夫なのかねえ」
 食器を下げながらも心配そうに呟く老婆の肩を、厨房から出てきた老爺が叩く。
「なあに……あの子に限って心配はいらねえさ」
「だって……」
「何せあの子は、一航戦赤城なんだから、な……」



 老爺が赤城、と呼んだ娘がカブを走らせると、ほどなくその場面に出くわした。
 ひとことで表すならば、これは誘拐である。
 狭い山道を塞ぐように停められたジープの中へ、まだ小学校へも通っていないのではないか? という年頃の少女が一人、さるぐつわをされて押し込められようとしていたのだ。
 下手人と思わしき男は三人、いずれも典型的なミクロネシア人の容貌をしていて、内一人は少女をジープの中へ押し込めようとしている。
 そのジープに道を塞がれているのだから、先のタクシーは当然停車しており、その運転手と思わしき男が気絶させられて道に放り出されていた。
 となると、今にも連れ去られようとしている少女はこのタクシーに乗っていたものであろうか……?
 考えている暇はない。
 赤城はカブを横滑りに停車させ、男たちの前に降り立った。
「なんだこいつ!?」
「こんな話は聞いてないぞ!」
「おい、お前! とっとと失せろ!」
 なまりのひどい英語である。
 見るからに屈強な体をラフな格好に包んだ男たちであるが、赤城は彼らの恫喝を受けても平然としたものだ。
「その女の子を置いて、さっさとここから立ち去りなさい」
 言いながら、少女を抱いた男の元へ歩み出す。
 あまりに自然なその様子に、男たちは一瞬呆気にとられたものだが、やがてはっとしなおして手ぶらな二人が赤城の前に立ち塞がった。
「てめえ、なめた真似してんじゃ――」
「なめてるのはどっちです?」
 どこをどうしたものであろうか?
 傍から見れば、赤城の体が少し揺れ動いただけである。しかし、次の瞬間には立ち塞がった男たちが脳天から地面へ落とされ、気絶していたのだ。
「な……? あ……?」
「無駄なことはしないことです」
 少女を抱えた男は、あまりのことに言葉もないといった有様であったが、しかし、すぐさま我を取り戻して後ろ腰に手を回す。
 が、そこへ拳銃が挟まれていることはすでに看破していた赤城だ。


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