過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 21:26:53.31 ID:foU1KJOC0
 艦娘と妖精とは感覚がリンクしており、多くの言葉を交わす必要はない。
 ただそれだけの短いやりとりを終え、赤城は空中に向けて艦載機を放ったのである。
 すると、搭乗した妖精がベテランパイロットも顔負けの操縦テクニックを披露して巧みに風を捕まえ、見る見る内に高空へ昇っていくではないか。
 その速度は、明らかに複葉機のそれではない。
 これこそが艦娘と現代兵器の間にある絶対的な壁であり、艦娘の艦載機はマッハ10を軽々と越えたスピードで、ミサイル以上の威力を持った搭載火器を放つことができるのだ。
「これでよし、と。あとは……」
 今度はポケットから携帯電話を取り出し、何事か打ち合わせを始める。それが済んで通話を切ると、再び別の番号をコールし、また短く打ち合わせをした。
「それじゃあ、頼みましたよ」
 携帯電話をしまい、借りてきたカブに乗りこむ。下手人の男たちには、あえてなにもしなかった。
 そして赤城は、そのままカブを走らせると、文月を送り出した茶屋へ戻って行ったのである。



「それで、この子がその……?」
「文月、だよ?」
「はあ……?」
 老爺が経営している茶屋には二階席も用意されており、今は赤城が借り切っていた。
 そこで髪を下ろし、眼鏡を外して普段に近い装いとなった赤城の手から、たっぷりと白砂糖のかけられた白玉を与えられていた文月は、にっこりとそう答えたのである。
 それに困惑顔を向けるのは、加賀と吹雪であった。
 それぞれが正規空母と駆逐艦の戦力を受け継ぐ艦娘であるが、今は赤城同様に私服へ着替えていた。
 山道での大立ち回りから、二時間ほどが経過している。
 連絡を受け、二人が駆け付けてくる間に赤城は文月からおおよその事情を聞き取り終えていた。
 とはいえ、分かったことはそう多くない。
 第一に、この少女が父親に言われるままタクシーへと乗せられたこと。これは山道で聞いたことと同じだ。
 そして第二に、この少女が自分の名字と住所を思い出せずにいる、ということが分かった。
 最初は文月という名字であろうと考えた赤城であったが、どうも聞き取るにこれは下の名前であるらしく、では名字はなんというのか? と尋ねれば、
「しらない」
「文月は、文月だよ」
 などという答えがかえってくるのである。
 赤城からそのことを聞き、吹雪がううんとうなって見せた。
「住所はともかく、そんなことがあるものなんですか? ね? 文月ちゃん、本当に分からないの?」
「わからないよ、文月は文月だもん」
「私も、散々聞いてみたのだけど……」
「まあ、小さい子だからそういうこともあるのでしょう」
 それより、と加賀が切り出した。
「赤城さん、あなたはこの事件を、私たちの力だけで解決するつもりなんですね?」
「え? そうなんですか?」
 困惑する吹雪をよそに、加賀は全てお目通し、といった風情である。


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