過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:32:08.78 ID:foU1KJOC0
安置され、非番の乗組員たちは部屋の隅で居心地悪そうにしている士官たちの視線を受けながらも、記念撮影などに興じているのである。
 ちなみに由良は、真っ先に記念撮影を行っており、その写真をメールに添付して鎮守府に残った艦娘たちに自慢していたものだ。
「……私はいいさ。今は、自分の艤装に集中しないと、な」
「まだ……調子、戻らないんだ?」
「ああ、日に日に悪くなっている気がする。今日の定時哨戒も、思うように速度が出せなかった」
 あれ以来、五十鈴の不調は続いていた。
 体調は良い。日頃の心がけもあって、万全といってよい状態を維持している。
 だが、どうにも上手く艤装の力を引き出せないでいるのだ。
 かつては自分の手足の如く操れていた装備ひとつひとつの挙動が重く、その動きはどこまでもぎこちない。
「私と艤装との間で、なにかがずれてしまっている……そう感じるんだ」
 だが、そのずれがなんなのか。それが分からない。
 いや、なぜそうなっているのか、予感はあるのだ。だが、それを口にしてしまうと現実のものとなってしまいそうな気がして……。
(私は……こんなにも弱かったのだろうか)
 こんな不安など吹き飛ばせない己の弱さに、憤慨してしまう。
「こんなことでは、本当に嫁にでもいくしかなくなるかもしれない、な……」
「五十鈴ちゃん……」
 由良が何かを告げようとした、その時である。
 船内全体に警報が鳴り響き、にわかに緊張が船を支配した。
「――これはっ!」
「深海棲艦だ! いくぞ由良!」
 こうなってしまえば、五十鈴の切り替えは早い。
 打ち出されたかのような早さで格納庫へ走り出し、由良もそれに続く。
 船内の持ち場へ移動する乗組員たちをかわしながら、あっという間に自身の艤装へと辿り着いた。
 長良型軽巡2番艦五十鈴の艤装は、各所が折りたたまれた状態で格納されており、すぐさま出撃できる態勢を整えられている。
 この格納庫には艦娘用のカタパルトも装備されており、艤装を装着した艦娘が素早く出撃できるようになっているのだ。
「こいっ!」
 五十鈴が自身の艤装に右手をかざし、命じる。
 ――だが、何も起きない。
「五十鈴ちゃん、どうしたのっ!?」
 後から追いついてきた由良が同じように右手をかざすと、やはり格納されていたその艤装が弾け飛び、自ら意思を持ったかのようにひとりでに装着されていく。
 これが本来あるべき光景であり、艦娘の艤装は持ち主が望めば、その脱着は意のままであるのだ。
「艤装が……反応しない!」
 五十鈴はこの事実を前にし、がく然とした声をあげる。
「反応しないって……そんな!」
「まさかとは思っていた……そうではないかと……だが、何もこんな時に!」
 悔しさのあまり、五十鈴は床板へ拳を打ちつける。
 艦娘の艤装が主に反応しないとなれば、その理由はただひとつ。
 艤装が主の任を解き、元の人間として解き放ったのだ。
「――っ!」
 絶句したのは、由良であったが……ハッチの開放音によって我を取り戻す。


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