過去ログ - 【艦これ】五十鈴の調子が悪いようです【SS】
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)
2013/11/11(月) 20:33:34.95 ID:foU1KJOC0
 少女はそれに、また驚かされた。軍規に照らし合わせれば、当然こんなところに存在するはずがない品物だ。
「ま、誰だか知らないが上手いことやって積み荷に潜り込ませたんだろうよ。そういうはしっこいやつ、俺は嫌いじゃあない」
 言いながら男は早くもウィスキーの栓を開け、中身を美味そうに口へ含む。
「――ふうっ、昔は酒なんか大嫌いだったが、いや、この頃は悪くないと思うようになってきたな」
 そう言ってから、男はじろりと少女をねめつける。
「それで話を戻すが……お前さんはこんなところで何をしているんだ?」
「で、ですから私には、もう戦う力が……」
「力がないから、戦わない……?」
「そ、そうです。当り前じゃないですか!?」
「お前、力があるから戦うのか?」
 その言葉が不思議と胸に突き刺さり、少女は二の句を告げなくなった。
「がっかりだねえ……俺はよ、艦娘ってのは戦う意思を持った人間がなるものだと思ってたんだぜ? それが、役目を背負わされたから仕方なくそうするときたもんだ」
「だ、誰もそこまでは! それに、あなたにそんなことを言われる筋合いは!」
「あるね。大いにある。俺は戦ったぞ。役目を負わされたからではなく、自分がそうしたいから戦った。右を見ても左を見ても、周りはばかばっかりだったが、それでもだ」
 その言葉には重みがある。決して口だけのものではないのが、少女には伝わってくるのだ。
「……それにまあ、少しはましなばかも中にはいたからな。俺が戦って、そういうやつらが助かるってんならそれは悪くなかった。お前さんはどうだ? え?」
「私は……」
 少女は自分の胸に問いかける。
「私だってそうだ! 由良を、仲間たちを助けたいと思っている!」
「その言葉に、二言はないかえ?」
 そう問いかける男の目には、無限の愛情が込められていたのである。
 決意と共に少女がうなずくと、もう目の前に男の姿はなかった。
 代わりに現れたのは――。



 瞬間、時間にして万分の一秒にも満たぬ刹那の時。
 船体が大きく水面へと沈みこんだ。
 その時、輸送船の内部では、確かに質量が生まれていたのである。
 その重さ、実に33800トン。
 それはこの時代において、再び生を、戦う機会を得たものが発した、歓喜の叫びでもあったのだろうか……。



「なんて力……これがフラッグシップだというの……」
 戦艦ル級が放つ砲撃を、済んでのところでかわしながら由良はそうひとりごちた。
 艦娘としての戦歴は長い方である彼女だが、それでもこれほどの大物と戦うのは初めてのことであった。
 先程から、彼女を含めた艦娘たちは回避行動に専念しており、防戦一方といった体である。
 それほどまでに、歴然とした戦闘力の差があった。
 ル級が持つ主砲の威力と射程は由良たちのそれを遥かに上回っており、直撃はもとより、至近弾ですら命に関わる傷を負うのは間違いない。
 艦娘の艤装には衝撃から身を守る加護が備


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