過去ログ - 【安価】苗木「今日から2年生か・・・」【ダンロン1+2】
1- 20
580:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/11/23(土) 19:19:59.09 ID:Yq2Noa/q0
『夢を見てたよ濃い恋する夢 何でも上がってく Yeah?♪
 おはよー、ライドやでー。
 みんな、夢見たりしてへん? はよ起きなあかんでー?』

何やら明るく激しい音楽が鳴ったかと思うと20秒程でぷっつりと途切れ、自分に酔っているように歌っていたライド(担当教官)は我に返ったかのようにテンションを落として喋り始めた。
ルール説明の時に言っていた定時放送というものらしい。
時計を見ると、6時を30秒以上過ぎていた。

望月卓也(男子十七番)はデイパックの中から地図の入れられたファイルを取り出し、中に同梱されているペンを握った。
地図の脇にはご丁寧に名簿が印刷されていた。
これは亡くなったクラスメイトをチェックするために使えと、そういうことなのだろうか。
いらぬ親切心に心底腹が立つ。
クラスメイト同士で殺し合うだなんて、絶対におかしいのに。


卓也が所属するテニス部の部長であり生徒会長でもある城ヶ崎麗(男子十番)は、殺し合いなんてやらない、と高らかに宣言していた。
その様子はさすが麗サマだな、と感心したし、田中顕昌(男子十一番)のように『殺し合いだなんておかしい』と考えていたのが自分だけではないということに安心した。
アキヒロ(軍人)は『実際時間切れで優勝者なしなんてケースはほぼない。ちゃんと優勝者が決まるんだ』と言っていたけれど、優勝者が決まらない稀なケースに自分たちならなれるのではないか、しかも親が力を持っているという子が多いのだから何らかの力が働いてプログラム自体中止になるのではないか、そんな希望さえ抱いた。

しかし、現実はそんなに甘いものではなかった。
プログラムが開始してから僅か3時間の間に何度も銃声は響いていた。
恋人の財前永佳(女子六番)は宍貝雄大(男子八番)を射殺したし、親友の春川英隆(男子十四番)も親しかったはずの日比野迅(男子十五番)のチームを襲ったし、面倒見の良い迅さえも銃を手にしてか弱い広瀬邑子(女子十五番)を盾にした。
誰も彼も、共に机を並べて勉強したクラスメイトに牙を剥いていた。
信じられなかった。


どうしてこんなものに巻き込まれなければならなかったのか。
今更考えてもどうしようもないのだけれど、卓也はずっと頭を抱えそればかりを考え、英隆が何事かを話しかけてきても気付きもしなかった。

『えー、ほんなら、これから第一回定時放送を始めまーす。
 …あら、なんかこうさ、ライブみたいにさ、『イエーイ!』みたいな反応ないん?
 …冗談やって、あったらビックリするわ。
 …あ、はよしろって? もーエッちゃんのせっかちー』

ライドのマイペースな放送内容に苛立ちを憶えた。
卓也たちには命懸けの戦いを強要しておきながらこれは何だ。
ふざけているにも程がある。

『じゃ、まずは儚く散ったお友達の名前、時系列順に呼んでくからな。
 両手にあふれそうな想い出たちを枯れないように抱き締めてな!
 男子十一番・田中顕昌君…は知っての通りやな。
 男子十八番・横山圭君。
 男子八番・宍貝雄大君。
 女子四番・如月梨杏さん。
 男子十二番・内藤恒祐君。
 男子二十番・林崎洋海君。
 女子十六番・星崎かれんさん…以上7人。
 ちなみに如月さん・内藤君・林崎君・星崎さんの8班は、リーダーの如月さんの
 死亡によって残りのメンバーの首輪が爆発したから、皆は気ぃつけなー。
 リーダーの皆も、自分の命大切にせなあかんで?
 くれぐれも自分から命を絶つとか、そんな馬鹿げた真似はせんように。
 リーダーの自殺でもメンバーの首輪は連動して爆発するからな』

続々と呼ばれるクラスメイトの名前――愕然とした。
たった3時間の間に、こんなにもクラスメイトが減るだなんて信じられなかった。

恒祐…

いつも一緒にはしゃいでいた恒祐の名前が呼ばれた。
クラスの誰よりも派手な格好をしているが、友達のことを大切にしていた恒祐。
名前を呼ばれ教室を出る時には、ずっと顕昌の方を涙目で見つめており、ライドに急かされアキヒロに銃を向けられたためにかれんに腕を引っ張られて教室の外に消えるまで、ずっと顕昌の死を悼んでいた。
一見真逆の顕昌と恒祐だったが、恒祐がいかに顕昌を大切に思っていたかということが痛々しい程に伝わり、その光景に卓也の頬を涙が伝った。

恒祐は、あの凸凹にしか見えないチームで何を思い、どう行動していたのだろう。
クラスメイトを見下しているイメージの強い梨杏、何を考えているかわからないどころか声すらろくに聞いたことがない洋海、永佳の友人たちの中では1番擦れていてとっつきにくかったかれん――繋がりも何も感じないあのチームに放り込まれたので、いくら場を盛り上げることが好きな恒祐でもお手上げだったのではないだろうか。
そして、リーダーの梨杏が命を落とした時、どれほど恐ろしい思いをしたのだろう。
首輪が爆発する時、それは瞬間的なものなのか、それとも少し時間が空くものなのかはわからないが、後者であるならばその恐怖は計り知れない。

『それから、禁止エリアを発表するから、ちゃんとメモとりや?
 今から1時間後の午前7時、E=08エリア。
 午前9時、C=04エリア。
 午前11時、I=01エリア…はこれ海やから関係ないか。
 コンピューターがランダムで決めてるから、海だけのエリアが出ることもあんねん。
 言った時間以降にそのエリアに入ると、首輪が爆発するから気ぃつけてな』

卓也はライドの言った禁止エリアを地図に走り書きした。
ライドの言う通り、I=01エリアは全てが海なので関係ない。E=08エリアも島の東側の端が少しかすっているが殆ど海で、陸地の部分も島の外周を囲む道路にはギリギリ被っていないので、道路より西側にいれば安全だ。問題はC=04エリアで、丸々陸地であり北側の集落の一部が重なっているので、北の集落に行く場合には十分に位置に気を付けなければならない。

『友達が死んで辛いと思うけど、みんな元気出して頑張って戦ってなー。次は昼の0時に放送するから、それまで戦い抜いて、また俺の美声に…あっ、エッちゃん何その冷たい目!!あーなんか恥ずかしなってきたわー…じゃあ、放送終わりー』

何とも締まらない終わり方で、放送はぶつっと切れた。卓也は横目でちらりと永佳を見遣った。滅多なことでは表情を変えないけれどその心の内では様々な感情を抱えている彼女は、親友の水田早稀(女子十七番)と戦闘を行い、かれんを失った。今も表情は普段と変わりないが、思うことはあるのだと思う。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/668.42 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice