過去ログ - 【安価】苗木「今日から2年生か・・・」【ダンロン1+2】
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2013/11/26(火) 06:12:16.72 ID:BVhJwVsq0
B=08エリアの北東に位置する農協の建物の中の1階。事務室らしき部屋の中に、稲田藤馬(男子4番)は持っていたポリタンクを置いた。「これで、全部だよな、穂高」「そーだな…」斎藤穂高(男子8番)は浮かない顔をして、溜息を吐いた。藤馬も無理に作った笑みを引っ込めた。2人の間に重苦しい空気が流れる。「…不破は?」そう尋ねるまでに、かなりの時間がかかった。穂高はちらっと扉の方に目を遣った。「薫の、ところ」「…そっか…」場所の移動には理由があった。藤馬は1人でデパートの留守を預かっていた。最初は穂高もいたが、銃声が聞こえたので、穂高が様子を見てくると出て行った。帰ってきた3人の姿に、言葉を失った。穂高が入り口の扉を開き、そこに不破千尋(男子17番)と濱中薫(女子14番)が入ってきた。正確には、片腕がなくなった薫を、千尋が負ぶっていた。薫は腹に穴を開けて事切れていて、千尋は放心状態だった。教室で仲間の栗原佑(男子7番)が殺された時の状態に似ていた。薫が、死んでる――藤馬はその場にへたり込んだ。溢れてきた涙を拭うことなく、千尋が床にそっと置いた薫の変わり果てた姿を凝視した。あの人懐こい笑顔はもう見る事ができないし、あの可愛らしい声も聞く事ができない。千尋を信じたあの真剣な眼差しも、姫川奈都希(女子15番)を失った時に見せた涙も、もう見る事ができない。ほんの30分ほど前には、目の前で動いていたのに…『薫、やめろっ!!』、あんな怒ったのが、オレと薫の最後の会話かよ…藤馬は頭を抱えた。最悪な別れだ、仲間だったのに。「…藤馬」穂高に肩を叩かれ、藤馬は涙を手の甲で乱暴に拭った。「移動しよう、B=08エリアの農協。荷物全部運ぶから、手伝って」地図を見せられ、藤馬は首を傾げた。「何でまた…」穂高は薫の方を一瞥し、地図を折りたたんだ。
「薫は、委員長…浅原に殺られたんだ。
不破が言うには、委員長は多分傷を負って逃げたんだ。でも、もしかしたら薫からこの場所がバレたかもしれない。何か知らないけど委員長は不破を憎んでるんだと。ここが襲われる可能性が高いから、移動するんだ」委員長――浅原誠(男子2番)は、苦手だ。真面目で冷淡、バンドを組んでる穂高たちを、いつも白い目で見ていた。『学生の本分は勉強なのに、うるさい音楽なんてやってたら将来不安だよ』とか言われた記憶がある。うるせぇよ、オレらの将来なんか心配してくれなくたって結構だっての。…いや、そんな事は今は置いといて。「不破、委員長に何かしたのか?」「別に何も」千尋は顔をこちらに向けず、弾の切れたウージー9ミリサブマシンガンのマガジンを詰め替えてそれを肩に掛け、薫の身体を再び背負った。「むしろオレがされた側だ。オレだって憎んでるよ、あの時から、ずっと」妙に抑揚のない声に、少しぞっとした。『オレがされた側』である事、それは第三者だった藤馬には詳しくはわからない事だったが、あの時の事は少しは憶えている。千尋が見せた悔しげな顔と、それを見た誠の歪んだ笑顔。あと知っている事といえば、千尋の親が呼び出しされていた事と、その事件をきっかけに千尋の身なりと交友関係が変わった事くらいだろうか。「…薫、連れて行くのか?」全員分の荷物を肩に掛けてややふらふらしながら立っていた穂高が訊いた。千尋は無言のまま、先にデパートを出て行った。薫を独りにしたくなかったのか。作戦の行く末を見ていてほしかったのか。生憎読心術など身に付けていないので、千尋の考えはわからなかった。そして数回の往復の末、全ての必要な物は移動し終えた。藤馬は穂高と共に、千尋がいる部屋をそっと覗いた。仮眠室に置いてあった布団を敷き、その上に薫の亡骸が横たわっている。千尋はその布団から少し離れた椅子に腰掛け、どこかをぼーっと見ていた。穂高が言うには、穂高が千尋たちのもとに着いた時からずっとこんな調子だという。冷たくなった薫を抱き、呆然としていたらしい。声を掛けてもしばらく気付いてくれず、やっと気付いた時にはゆっくりと穂高の方を見て、一言だけ言葉を発した。「助けられなかった」、と。穂高は何も言うことができず、しばらく沈黙の時間が続いた後に、ぽつりぽつりとその場で起こった出来事を話したらしい。「普段の不破とあまりに違ってて、言葉が出なかった」穂高がそう言ったが、それは藤馬にもとてもよくわかる。
今、千尋に掛ける言葉が見つからない。
「……け、……つけ……」千尋が何か言葉を発しているようだった。目を閉じ、口を小さく動かしていた。藤馬は穂高と顔を見合わせ、その言葉を聞き取った。
「落ち着け…落ち着くんだ… やらなきゃいけないんだ…政府を潰すんだ…
誠クンを恨んでる時じゃないんだ…
穂高クンも…藤馬クンも…海斗クンも…凪紗チャンも…
皆助けるんだ…皆で帰るんだ…
耐えるんだ…今は…」
自分自身に言い聞かせているようだった。
数回深呼吸し、両頬をパンパンと叩いき、立ち上がった。
「薫チャン、オレ頑張るよ、絶対」
千尋の顔に、数時間ぶりに笑顔が浮かんだ。
それがたとえ無理に浮かべた物であるとわかっていても、少し心が安らいだ。
「不破…って押すな穂高…わあぁぁっ!!」
少し開けていたドアがギィッと完全に開き、2人はその場に重なって倒れた。
千尋は驚いた表情を浮かべたが、すぐにそれは呆れ顔に変わった。
「なぁにやってんの、2人共」
藤馬は苦笑いを浮かべ、穂高と顔を見合わせた後、千尋を見上げた。
「オレら、絶対不破の仲間でい続けるからな、頑張ろうな!!
薫の為にも、奈都希の為にも、皆の為にも、絶対成功させような!!」
千尋は髪をかき上げ、笑顔を浮かべた。
「そうだね、じゃあ寝てないでちゃっちゃか働いてね?」
その後に千尋がぽそっと呟いた。小さな声だったけれど、それは今千尋が願う何よりも大きな願いだろう。もちろん、それは藤馬たちにとっても何よりも願う事だが。
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