77: ◆Q2Rh6LUPmsVj[saga]
2014/03/02(日) 22:13:49.87 ID:J+Hw8iuQ0
太宰治が書いた小説の中に「走れメロス」という作品がある。
その物語にはありとあらゆる友情が詰まっている。
例えば、処刑までの人質となる事を承諾したセリウンティヌス。
メロスがもしも戻ってこなかったら代わりに処刑される事になるのだが、しかし彼は何も言わずそれを引き受けた。
暴虐な王ディオニスは、メロスは戻らぬとセリウンティヌスをからかい続けたが、それでも彼は友を信じて、メロスは来ます、とだけ答え続けた。
約束の時刻まで残りわずかとなり、処刑場まで連れていかれた時もセリウンティヌスは平然としていた。
全ては友を信じていたからだ。
その信頼に応え、約束通り帰ってきたメロスは何故かフルチンだった。
処刑時刻ギリギリになって現れたフルチンの親友。
来る時に何をしていたのか、ともすればナニをしていたのか。ひょっとしてそれで帰りが遅くなったのか。
しかし、その事をセリウンティヌスは一切口にはしなかった。
友情とはそういうものかもしれない。
問い質したところで意味のない事もある。
無益な事だってある。
知らなくても良い事だってあるだろう。
ただ側に居続けるだけの友情もあるはずだ。
トウジもケンスケも正にそんな気分だったかもしれない。
ずいぶんと長い間ケンスケは黙ったままだったが、やがてぽつりと呟いた。
「そのセーラー服。似合ってるぜ、トウジ……」
ほんの少し、間が空いた。
トウジは全てを悟ったかの様に微笑んだ。
「……せやろ?」
どうしようない事だって世の中にはある。
その日の太陽はお互いやけに滲んで見えた。
彼らは恐らくこの日の事を一生忘れないだろう……。
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