12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/12/02(月) 23:19:51.89 ID:7uDsyhBso
その一言、その一動作、ただそれだけで、私の心の中で騒ついていた感情の濁流がストンと何処かへ落ちていった。
残ったのは、何も無い白い箱一つ。
すっきりしたような、空虚だけが残ってしまったようでいて、安心したような、深い悲しみに落ちてしまったようでもあった。
「はいっ」
笑いそうになりながら、泣きそうになりながら、重い恋から解放されたような、想い人から離されたような調子でそれだけ零すと、ふいに目頭が熱くなった。
きっと、空いてしまった部屋を埋めようと涙が注がれだしたのだ。
それが溢れて溢れて、いまに流れてしまいそうになっている。
いま泣いてしまえば、彼女はまた私を受け入れてしまうかもしれない。それはダメだ。彼女が決意してくれてようやく終わりそうなんだ。私がムダにしたくない。
そう思い立ち去ろうとした私をあずささんの腕が捕まえて抱き寄せる。
「待って、千早ちゃん。私の話を聞いて」
耳元で柔らかく紡がれる声。私を包むように抱き締めてくれる身体。背中に回された手。短くなった髪の毛。肩に顔を寄せて、胸が重なり合う。心音がお互いに響き、伝わる呼吸の鼓動にあずささんの生を感じる。
あぁ、こんな時でも彼女は優しく温かいのだなと思った。
「はい……、あずささん。聞きます。話してください」
目を閉じる。口を閉じる。あずささんが話したいと言うんだ。今はただ聞こう。
「いつか止めなきゃって、ずっと思っていたわ。このままだと、千早ちゃんが壊れちゃうんじゃないかって気がして。だって、千早ちゃんはいつも苦しそうにしていたから。ずっと、罪悪感を感じているみたいだったから。でもね、止める勇気が出なかったの。何を言っても私が悲しくなりそうで、何を言っても千早ちゃんを傷付けてしまいそうで……。
ごめんなさい、臆病で。止めなくても、千早ちゃんはいっぱい傷付いていたのにね。私のせいで、辛い思いをさせたわ」
いいえ。いいえ、あずささん。謝らないで下さい。誤らないで下さい。
辛かったです。苦しかったです。沢山傷付きました。沢山悲しみました。
私たちの関係は歪で、私たちの世界は不自由でした。
でも、幸せだったんです。歪でも不自由でも、貴女の傍に居れたこと。それが、何よりも幸せだったんです。
「でも、ようやく勇気が持てたの。こうして、変わろうと思える機会をもらってね。だから、言うわ。もうこんなことはしちゃダメ」
「はい」
「こういうことは、ちゃんとした関係になってからじゃないとダメ」
「えっ……」
「言って、千早ちゃん。私のこと、どう思ってる?」
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