過去ログ - 千早「オシロイバナ」
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/12/02(月) 23:25:47.13 ID:7uDsyhBso

「ごめんなさい」

まだ少し鼻声だ。

「あら、どうして謝るのかしら」

「いえ、服を濡らしてしまったので……」

「もう、これくらい良いのに」

なんだか随分と泣いた。そして随分と恥ずかしいことを沢山言った。今日だけで涙も言葉も全部出てしまったような気がする。でも、あずささんと一緒に居れたらどちらもまた自然に出てくるのだろうな、と思う。嬉しかったり、悲しかったり、幸せだったり、温かかったりで。

「あの、あずささん……、私、顔を洗いに……」

泣いて泣いて泣いたのだ。今の私の顔はまぶたが腫れ、涙の跡が頬に残り、ひどく滑稽になっているに違いない。そんな顔を長く見られたくなくて立とうとするが、背中にあずささんの手がまわったままだ。腰を軽く揺すってみるも、解ける気配はない。

「だーめ」

それどころか、逆にさらに強く抱きしめられ、私の鼓動とあずささの鼓動が近くなる。

あずささんが私のことを好きだなんて、本当に信じられない。抱きしめてくれるあずささんの熱が、髪を梳いている指の優しさが確かに今を現実と教えてくれているのに、夢をたゆたっている感覚が抜けない。

私は幼稚で、そのせいであずささんを傷つけているばかりだったから。あずささんはその優しさで私を突き放せないだけで、私のことを憎んでいると思っていた。憎んでなくても、情なんてもうとっくに消えてしまっているものだと。

私は不誠実だ。疑念を抱いている。好きな人の好きの言葉を素直に受け入れられないでいる。あずささんが悪いのではなく、私が私のしてきたことが許されることを信じられないのだ。

この気持ちを口にすれば、あずささんはきっと悲しむだろう。どんなに巧みに着飾った言葉を並べても、結局は信頼していないことへの言い訳になってしまう。

あずささんを悲しませたくないという大義名分で、私の心の中にしまっておくことも出来る。

でも、それこそ不誠実で不道徳で、何よりも自身の感情からの逃げだ。その逃げに救いがないのはよく分かっている。いつか気持ちの泥濘に沈む日が来て、いつかあずささんを傷つける。逃げの果てに待つのは、同じ過ちの繰り返しだ。

もう、逃げたくない。

あずささんが好きと言ってくれるからこそ、私はこの言葉を口にしないといけない。あずささんに好意を受け取ってもらえて、あずささんに好意を与えてもらって恥ずかしくない人になる為に。


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