過去ログ - ほむら「願いの果て」2
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2013/12/05(木) 00:05:40.41 ID:orgbAKWn0
目の端に映る、連続した菱形模様のタイツと紫色のスカートがゆっくりと正面に回り込む。
見たところ女性のようだ、顔が動かないため胸から下しか分からないが体格はかなり若い。
年は自分と同じくらいだろうか。

その女性の足音が止まって二人が向かい合う。そして一度振り向きながら何かをつぶやくともう一度こちらへと向き直した。

肩越しに見える白いワンピースの少女が小さく頷いて椅子から立ち上がると、そのまま奥へと歩いて行く。


―――遠くへ行ってしまう、呼び止めなくては。


何故かそう直感して、反射的に上体を前に投げ出し、手を伸ばそうとする。
少しだけ、ほんの少しだけ動けた。
しかし前に進むことは出来なかった。

目の前に立つスカート姿の少女が、腰まで伸びた長い黒髪をその頭の動きに合わせて左右に揺らした。

いくつもの曖昧な感情がふつふつと体の奥底から沸いて来る。
遠のく後ろ姿に思いっきり叫びたかった。
それなのに形になる前に霧散して、上手く言葉になって出てこない。

何も出来ないまま、揺れる黒髪の奥で徐々に小さくなる白いワンピースを何も出来ずに、ただ見送る。


―――行かないで……!


ようやく掬い上げた言葉が頭に響くと、もう少女は見えなくなってしまっていた。

主に取り残された二つの椅子が草原の中心で虚しく光を反射させている。

深い喪失感と激流のように押し寄せて来る処理しきれない感情の爆発が、小さな雫となって一筋流れ落ちると、
それを合図にするかのように遠くに聞こえていたはずの鐘の音が一際大きく耳元で響いた後、

しばらく残響音を残して鳴り止んだ。





―――――



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