過去ログ - 男「え、あいつが倒れた?」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/06(金) 01:07:31.82 ID:bV1zFA7X0
「あいつなんて言わないのよ」

携帯越しの母の声は少し疲れていた。でも慌てた様子はない。
だから大した事では無いのだろうと思った。

「ああ…それよりなんで?…大丈夫なん?」

「それがね、もう後少ししかもたないと思うの」


「えっ?」

俺の父はどうやら死ぬらしい。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:08:37.56 ID:bV1zFA7X0
三日後、俺は新幹線で実家へ帰った。久しぶりに訪れた故郷は、すっかりと形を変えていた。

「うわー」

多少は変わっているだろうとは思ったが、予想以上の変化で驚いた。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:09:16.59 ID:bV1zFA7X0
母が由井ちゃんが迎えに来ると言っていた。
由井ちゃんというのは、家が隣で子供の頃によく遊んでいた女の子だ。
俺よりも3.4歳ぐらい年下だった思う。

僕のタバコを手に取り、得意げな顔していた少女の表情が曇った。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 01:09:59.70 ID:bV1zFA7X0
19、そうか4歳年下だったか。
ところで確かに大きくなっているけど、よく考えてみると。

「えっ?じゃあ、年の割りには大きくなってはないのか」

以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:11:10.26 ID:bV1zFA7X0
バスに乗って家へと向かった。
駅付近こそは昔の面影を殆ど残して無かったけれど、街から離れるにつれてあまり形の変わっていない故郷
が見えてきた。
バス停から20分歩くと家が見えた。
無駄に広い庭にある大きな木を見て、懐かしさを感じる。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:11:52.89 ID:bV1zFA7X0
「ただいま」

そう言って家に上がると、すぐに奥からパタパタと母さんが出て来た。

「よく来たね。お父さんの部屋に行く?」
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:12:24.13 ID:bV1zFA7X0
俺は夢見るバンドマンだ。
この一文だけを見ると、何となく駄目な若者を想像してしまう。
自分で言うのも可笑しいのだが、俺は駄目な若者ではない、つもりだ。
適当な気持ちでこの道を選んだわけではないし、何よりメジャーデビューの話も来ているのだ。

以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 01:13:05.13 ID:bV1zFA7X0
正直音楽にたいして興味もなかった。何故入ったかというと、先輩にバンドをすると女の子にモテると言われたからだ。
そんな軽い気持ちで始めたのだけど、いつの間にか俺の中で火がついた。先輩達との温度差が原因でそのバンドを抜け、もっと上手なバンドに入れてもらった。
その頃はまだプロを目指していたわけではない。
ただもっと良い演奏をしたかった、それだけだった。それがいつしか、もっとたくさんの人に聞かしたい、へと変わった。

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:13:36.31 ID:bV1zFA7X0
俺は一度ライブを見てくれと言ったが、相手にされなかった。

俺は頭にきて、生まれて初めて父さんと喧嘩をした。
簡単に認めてくれるとは思ってなどいなかった。でも、あそこまで相手にされないと思わなかった。

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10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:14:21.13 ID:bV1zFA7X0
しかし悪いことばかりでは無かった。父と険悪になった代わりに、母との仲が良くなったのだ。
俺は小さい頃から母が嫌いだった。
父の言いなりだからだ。母は父に一切逆らわないのだ。
それが情けなく見えて、母のことが嫌いだった。

以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:14:55.47 ID:bV1zFA7X0
「何してるの?」

縁側でタバコを吸ってると、いつの間にか由井ちゃんが近くにいた。

「不法侵入だぞ」
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:15:43.52 ID:bV1zFA7X0
「で、何してるの」

由井ちゃんは、顔を近付けて尋ねてくる。
その勢いに押されながら答えた。

以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:16:25.84 ID:bV1zFA7X0
「こっちの空は大きいな」

「どこでも一緒でしょ?」

「いや、東京の空は狭いよ」
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:16:59.64 ID:bV1zFA7X0
「んー、どんなとこってなぁ。人が多くて」

「じゃ、じゃあ、可愛い子とかもいっぱいいるの?」

「なに、女の子好きなの?」
以下略



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:18:02.87 ID:bV1zFA7X0
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夜は久しぶりに、母さんの手料理を食べた。手料理自体が久しぶりだったから、とても上手く感じた。

以下略



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:18:40.21 ID:bV1zFA7X0
これはまずかったと思い、母さんの顔を伺った。
母さんは悲しそうな顔で俺を見つめる。

「…ごめんって」

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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:19:16.74 ID:bV1zFA7X0
「父さんはねワザとあんたに厳しくしたんよ、あんが自分と似ているから。下手に優しくされるよりも否定された方が反発して頑張れるタイプだと分かってたから」

母の突然の告白に戸惑う。
本当なのだろうか、それとも最後に父親と顔を会わさせる為の嘘なのだろうか。

以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:19:46.96 ID:bV1zFA7X0
庭で大きな木を眺めていた。
ぼーっと、何も考えずに眺めていた。
この木はあいつが植えたものだ。
小さな俺があいつにお願いしたのだ。今考えると、とても下らない理由で欲しがったものだ。
忍者になろうとして、木を植えてくれと頼んだのだ。
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:20:18.98 ID:bV1zFA7X0
俺は中々成長しない木に飽きてしまって、いつの間にか跳ぶのをやめていた。
そして気づかないうちに木は、俺が跳べやしない高さまで成長していた。

そんな俺を見て、父さんは笑ったのだった。

以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/06(金) 01:22:08.01 ID:bV1zFA7X0
父さんの部屋に入ると、病人の匂いがした。

「よお」

「なんだ、東京から逃げて来たか?」
以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:22:43.16 ID:bV1zFA7X0
「父さん、こっち見なよ」

「…やだな」

「東京はさ、色々としんどいとこだった。そこで頑張れたのはさ、父さんがいたからだよ。むかつく背中がいつも心の中にあったから、だから頑張れたんだよ」
以下略



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