6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:11:52.89 ID:bV1zFA7X0
「ただいま」
そう言って家に上がると、すぐに奥からパタパタと母さんが出て来た。
「よく来たね。お父さんの部屋に行く?」
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2013/12/06(金) 01:12:24.13 ID:bV1zFA7X0
俺は夢見るバンドマンだ。
この一文だけを見ると、何となく駄目な若者を想像してしまう。
自分で言うのも可笑しいのだが、俺は駄目な若者ではない、つもりだ。
適当な気持ちでこの道を選んだわけではないし、何よりメジャーデビューの話も来ているのだ。
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/12/06(金) 01:13:05.13 ID:bV1zFA7X0
正直音楽にたいして興味もなかった。何故入ったかというと、先輩にバンドをすると女の子にモテると言われたからだ。
そんな軽い気持ちで始めたのだけど、いつの間にか俺の中で火がついた。先輩達との温度差が原因でそのバンドを抜け、もっと上手なバンドに入れてもらった。
その頃はまだプロを目指していたわけではない。
ただもっと良い演奏をしたかった、それだけだった。それがいつしか、もっとたくさんの人に聞かしたい、へと変わった。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:13:36.31 ID:bV1zFA7X0
俺は一度ライブを見てくれと言ったが、相手にされなかった。
俺は頭にきて、生まれて初めて父さんと喧嘩をした。
簡単に認めてくれるとは思ってなどいなかった。でも、あそこまで相手にされないと思わなかった。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:14:21.13 ID:bV1zFA7X0
しかし悪いことばかりでは無かった。父と険悪になった代わりに、母との仲が良くなったのだ。
俺は小さい頃から母が嫌いだった。
父の言いなりだからだ。母は父に一切逆らわないのだ。
それが情けなく見えて、母のことが嫌いだった。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:14:55.47 ID:bV1zFA7X0
「何してるの?」
縁側でタバコを吸ってると、いつの間にか由井ちゃんが近くにいた。
「不法侵入だぞ」
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:15:43.52 ID:bV1zFA7X0
「で、何してるの」
由井ちゃんは、顔を近付けて尋ねてくる。
その勢いに押されながら答えた。
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:16:25.84 ID:bV1zFA7X0
「こっちの空は大きいな」
「どこでも一緒でしょ?」
「いや、東京の空は狭いよ」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:16:59.64 ID:bV1zFA7X0
「んー、どんなとこってなぁ。人が多くて」
「じゃ、じゃあ、可愛い子とかもいっぱいいるの?」
「なに、女の子好きなの?」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:18:02.87 ID:bV1zFA7X0
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夜は久しぶりに、母さんの手料理を食べた。手料理自体が久しぶりだったから、とても上手く感じた。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/12/06(金) 01:18:40.21 ID:bV1zFA7X0
これはまずかったと思い、母さんの顔を伺った。
母さんは悲しそうな顔で俺を見つめる。
「…ごめんって」
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