121: ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2013/12/23(月) 22:25:10.47 ID:1FdDLW+Co
「…………え?」
そんな声しかでなかった。あまりに突然の乱入者、それは彼女の思考を停止させるのに充分なことだった。
「え?あれ?おじさん?」
薄暗い部屋の中で、今の今まで会話を交わらせていた男は煙のように消えていた。
「……我が子ながら、どこまでもイラつかせてくれる餓鬼だ……」
まるで『最初からそこにいなかったように』。
「……おじさん?どこに行ったの?」
探せども彼の姿は無く、混乱のみが少女の頭を支配する。しかし、それもわずかの事、すぐに『別のもの』に頭を支配されることになる。
「返事をしろっ!糞ガキがっ!!」
「キャッ!?」
頬を張る甲高い音が室内に鳴り響く。しかし、それに伴うひり付く痛みと、口内に広がる血の味が少女の意識を明確にさせた。
「『また、妄想にふけて誰ぞと会話しておったのか』!?」
「痛いっ!痛いですっお父様!止めてっ!!ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」
瞬時にして少女の脳を支配した『痛み』に身体は素直だった。頭髪を鷲掴みにされ、罵声を帯びせられても、無抵抗に、謝罪の言葉しか出てこなかった。
「何度言えばその悪癖を直すっ!?ああっ!?」
「いやっ!?ぶたないでくださいっ!おじさんっ、助けてっ!!」
振り上げられるその拳に、咄嗟に助けを呼ぶ。が、その声は部屋に空しくこだまするだけで、むしろ、それは、眼前で烈火の如く顔を赤くした父の怒りに、火を注ぐ行為に過ぎなかった。
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