過去ログ - 日向「信じて送り出した七海が」狛枝「2スレ目かな」
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2013/12/27(金) 17:53:01.20 ID:kYff4rAe0
康明から山寺の表情は見えなかったが、その後姿は固まったままだった。口を押さえている両腕が小刻みに震えているのが見て取れた。
康明は、彼の腕を硬く握ったままのせつなの手に触れた。せつなははっとしたように康明を見た。彼はゆっくりとうなずくと、せつなの肩を軽く抱いた。
「今ので爆弾の威力がわかっていただけたかと思いますね。 ……さて、説明も一通り終わりました。ほかに何か質問はありませんか?」
バイオリンが問いかけるが、誰も答えるものはいなかった。質問したいことはたくさんあるが、それはバイオリンの求めているものとは違うと思ったので、黙っていることにした。
「さて、そろそろ始めましょうか。私が今からくじを引きます。そこに書いてある人から、出席番号順に男女男女という順で出発してもらいます。入り口でバックを受け取ったら後はドアの外にいる人の指示に従ってくださいね。この建物をでたら始まりですので、皆さん、しっかり殺しあってください」
と、バイオリンがなにかを思い出したかのように小さくうなずくと、自分の胸ポケットに手をいれ、中からサインペンを取り出した。
「皆さんの私物かばんにも同じものが入っていると思います。先ほど勝手にいじらせてもらいました。別に何も盗んだりはしてませんからご安心を。 ……ちょっとだしてください」
そういわれて、康明は自分の鞄を探った。ペンは、開いたすぐそこにおいてあった。
「皆さん、見つかりましたか? 大丈夫みたいですね。それじゃ、それを持って、左手のてのひらに次の言葉を書いてください。『私たちは殺し合いをする』」
さあ、という表情でバイオリンは見渡すが、誰もペンを動かそうとしない。
「書いてください。『私たちは殺し合いをする』」
しかし、誰も動かない。康明も書きたくなんてなかった。ただ、下を向いてペンの先を見つめていた。
次の瞬間、康明の耳に三発の銃声が響いた。と、同時に悲鳴とうめき声がこだました。
「たけちゃん!」
せつなが驚いた声を上げ、それに反応して康明も自分の斜め後ろに眼をやった。康明から4人ほど間に挟んだ、普段の席と変わらない場所に健史はいた。脇腹の辺りを撃たれたらしく、押さえた手の隙間から血が滴り落ちていた。隣に座っている磐田真由香(女子2番)が心配そうに声をかけている。
今にもそっちに向かっていきそうなせつなの腕を、康明はつかんだ。「痛いっ」せつなが小さく声を上げたので、驚いて手を離した。
「ごめん……でも、だめだよ。勝手に動いたら」
「……そうだね……ありがと……」
せつなはぺこりと頭を下げると、上げかけた腰を下ろした。しかし、視線は健史から離さない。
「大丈夫だよ、タケなら」
「うん」
せつなはその台詞に安心したのか、体を前に向けなおした。
康明は周りを見回した。ほかに撃たれたのは美作杏子(女子18番)と富士川涼(男子17番)の様だが、二人ともかすっただけのようだ。あくまでも威嚇だったのだろう。
「さあ、書いてください」
バイオリンが凄みを利かせながら言った。今度は逆らうものはいなかった。みんな黙々とペンを動かし始めた。前に座っている戸田弘樹(男子14番)もせっせとペンを動かしているし、隣のせつなも特徴的な小さい丸い字を左の手のひらの上に走らせていた。
康明は躊躇いがちにペンのキャップをはずすと、手のひらにペン先をつけた。
「早く書いてください。『私たちは殺し合いをする』」
私たちは殺し合いを、まで書いて康明は止まった。そして、力強く『しない』と大きく書いた。
「次、『やらなきゃやられる』と右手のひらに書いてください」
?やらなきゃやられる?本当にそうか?みんなを疑ってどうする…
康明は「やらなきゃ」まで書いた文字の上から横線を何度も引いて、文字を黒く塗りつぶした。
私たちは殺し合いをしない、私たちは殺し合いをしない
康明はぐっと手に力を入れて、こぶしを握った。
「さて、遅くなってしまいましたね。それじゃ今からくじを引きます。名前を呼ばれたら返事をして、立って、荷物を持ってこっちでバッグを受け取って、出て行ってください。」
バイオリンが後ろのドアの前に詰まれているバッグに目をやってから、横に立っている兵士が持っている箱に手を突っ込んだ。
「…男子20番、柳沢雅弘君」
「は、はははい」
ひょこっと康明の左斜め前で柳沢が立ち上がった。いつものようなおどけた態度ではなく、とても緊張しているのが後ろからも分かった。少し小走りでドアに向かうと、兵士が無言でバッグを突きつけていた。
「柳沢君」
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