過去ログ - 日向「信じて送り出した七海が」狛枝「2スレ目かな」
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612:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/12/28(土) 15:35:42.13 ID:XEiCvzkC0
生まれて初めて目の当たりにする、見知った人間が殺される瞬間。

田中顕昌(男子十一番)の突然すぎる死に、教室内にはいくつもの悲鳴が重なり合って響き、黒板の前に並ぶ政府の人間たちから少しでも離れようと自分の席を放棄して教室の後ろ側にクラスメイトの大半は逃げて恐怖に顔を引き攣らせている。
木戸健太(男子六番)も自分の後ろの席に座る幼馴染の鳴神もみじ(女子十二番)の手を引きながら後方に下がり、同じように朝比奈紗羅(女子一番)を連れてきた真壁瑠衣斗(男子十六番)と共にもみじと紗羅を隠すように立ち、ライド(担当教官)たちを睨みつけた。

中には、動かないまたは動けない者たちもいた。
友人が射殺される瞬間を間近で見てしまった平野南海(女子十四番)や雨宮悠希(男子三番)は腰を抜かしてしまい、その場にへたり込んでしまっていた。
アキヒロ(軍人)が放った銃弾のうちの1つが自らの机に着弾した鷹城雪美(女子九番)は座ったままじっと穴の開いた机を見つめており、隣の席の榊原賢吾(男子七番)の声にも無反応だった。

そして、健太たちをいつも引っ張っているリーダーの城ヶ崎麗(男子十番)。
麗の幼馴染であり、健太の彼女である上野原咲良(女子二番)を護るように抱き締めながら、ライドたちの動きをじっと見て警戒心を露わにしている。
近くの席の池ノ坊奨(男子四番)と高須撫子(女子十番)も2人の傍に寄り添い、やはりライドたちの動きを警戒しているようだった。

「さ…咲良…怪我してるよね…大丈夫かな…」

紗羅が後ろで不安げに呟いた。

そう、咲良は怪我をした。
アキヒロが銃を構えた瞬間、咲良は躊躇なく麗を護るために動いたのだ。
一歩間違えれば、今頃顕昌と同じ運命を辿っていたかもしれないというのに。

『上野原家の代々の家訓でね、“城ヶ崎家を守る”っていうのがあって。
 奨くんの家のも同じような家訓があるの。
 まあ、平和な今の時代に言われても、あまりピンとは来ないんだけど』

いつだったか、咲良はそう言って笑っていた。
しかし、咲良は動いた。
それは家訓が身に染みついていたのか、代々城ヶ崎家に仕えてきた上野原家の血がそうさせたのか――いや、咲良のことだから、そんな建前など関係なく、友人を護るために気が付いたら身体が動いていたのだろう。
それが、健太が心惹かれる上野原咲良という人間だ。

そんな咲良を護るのは自分であるべきなのに、今咲良を抱き締めているのは、麗。
健太よりもずっと長い間咲良を傍に置いていて。
健太が生まれるずっと昔から血で結ばれた関係があって。
2人の関係には、健太も立ち入ることはできなくて。
しかも誰がどう見ても、咲良と麗はお似合いで。
麗は健太より頭が良くて、運動ができて、テニスも上手くて、容姿も良くて、家柄も良くて――何一つ敵うことがない大きな壁だ。

何で、あそこにいるのが麗なんだ…何で、俺じゃないんだ…

嫉妬している場合ではないというのに健太の中ではぐるぐると黒い感情が渦巻き、教室内に漂い始めていた血の臭いと相まって、うっと呻き声を上げて口を押さえた。
健太の異変に気付いたもみじが「健ちゃん…?」と名前を呼びながら健太のブレザーの袖を掴んだが、健太はそれを振り払った。

俺が咲良を護る。
麗じゃない、俺が、咲良を、護るんだ。


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