過去ログ - 日向「信じて送り出した七海が」狛枝「2スレ目かな」
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976:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/02/05(水) 04:50:32.45 ID:peHDovB80
30分程前に響いた銃声に不安を憶え、真壁瑠衣斗(男子十六番)は同じグループの上野原咲良(女子二番)・高須撫子(女子十番)と共に西へと向かっていた。
既に禁止エリアとなった小中学校の北側を通る道路の脇を慎重に進み、木々の向こうに灯台が見える地図で言えばD=02エリアの西側まで何事もなく来たのだが、頭上から聞こえたスピーカーのノイズに足を止めた。

『この恋は時を超えて貴方の元へ咲かせよう♪
 みんな、おはようさん、ライド先生の定時放送の時間やでー!』

瑠衣斗は腕時計へと視線を落とした。
プログラムが始まり、二度目の朝が来たのだ。
前回の放送では40人いたクラスメイトが23人まで減り、夜中も何度か銃声が響いていたので、残り人数が半分を切っている可能性も十分にある。
放送の度に、聞きたくない名前が流れないようにと祈っているのだが、ライド(担当教官)の歌声の後ろで重く低く響くドラムとギターの音がその祈りを潰そうとしているような気がした。

…まさか、そんなの根拠がないよな、馬鹿らしい。

胸を掻き立てる不安を掻き消すように心の中でそう呟いた。

『じゃあ、まずは儚く散っていったお友達を発表するで!
 女子十四番・平野南海さん。
 男子十三番・原裕一郎君。
 女子十八番・室町古都美さん。
 男子十番・城ヶ崎麗君、以上4名や』

名簿を確認しながら、放送で呼ばれたクラスメイトの名前を線で消していた瑠衣斗は、4本目の線を引こうとし――手を止めた。

…今……何て……

ペン先が“男子十番”の左側で止まり、じんわりとインクが紙へ染みていた。
そんな、馬鹿な。
疲れているから聞き間違えたんだ、そうに違いない。
いいや、いくら疲れているからって彼の名前を聞き間違えるはずがない。
だけど、彼の名前が呼ばれるはずがない、こんな所で死ぬはずがない。
城ヶ崎麗の名前が呼ばれるだなんて、あるはずがない――不死身だとか超人だとかそういう話ではなく、麗が誰かに負けて命を落とす姿なんて想像できないのだ。

『それから、禁止エリアの発表なー!
 7時からE=06、神社の辺りやな。
 9時からA=07、なんや海やん、ラッキーやん自分ら。
 11時からH=02、南西の集落が入ってるから気ぃ付けなあかんで』

瑠衣斗はばっと顔を上げ、仲間たちの様子を確認した。
咲良はペンを地面へ落とし、呆然とどこか遠くを見ており、動く気配がない。
撫子は口許を押さえて俯き、小さく肩を震わせていた。
2人の様子が、自分の耳が正しかったという現実を瑠衣斗に突き付けたことに愕然としたのだが、禁止エリアを書き逃すわけにはいかないと、瑠衣斗は耳を放送に傾けて震える手でペンを走らせた。
城ヶ崎、何で、どうして――頭の中はその思いばかりが巡った。

『最後にアドバイスな。
 やー、今回の放送はビックリした子が多そうやなぁ。
 でもこれはつまり、彼も人の子、我も人の子っちゅーこっちゃ。
 誰にでもチャンスはあるってことやから、めげずに頑張らなあかんで!
 ほんなら今回は真面目にやったところで…次は昼になー!』

放送はブチッと切れ、辺りに静寂が戻った。
動くことができなかった。
受け入れたくない現実を突き付けられ、全身が錘を纏ったように重くて指一本動かせず、何かを考えようにも頭も回らず、時間だけが過ぎた。

数える気にもならないが少し時間が経った頃、隣で咲良がゆっくりと動き、瑠衣斗は顔を上げた。

「麗くん……」

小さく麗の名前を呟くと、咲良は荷物をその場に置いたまま、ふらふらと歩き出した。



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