過去ログ - 水木聖來「…クサッ」
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13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2013/12/15(日) 01:50:42.90 ID:HJFvpnSw0

臭いと言うのは不思議なもので、嫌な筈のものでも、時たま心地よい気分へと誘う時がある。
今のアタシの気分は、まさにそんなものだった。

確かに嫌な臭いであり、アタシ自身、今は顔を顰めているのがわかる。
それなのに、何故か何度も嗅ぎたくなってしまう。
癖になってしまうような感覚。

足の臭いなど、基本、自分のものであろうと嗅ぐのすら嫌悪する存在だとアタシは思う。
ましてや、洗うなどの手入れをしているとは言え、何度も使用してその臭いより更にひどくなった靴の臭いだ。

靴の中の臭いなどというのは、酷くなれば離れていても漂ってきてしまう。
だからこそ、靴の中の臭いを間近で嗅ぐ、などと言うことは今まで有り得なかったのだが。
それなのに、今のアタシは、この“匂い”に酔いしれてしまうような感覚に陥っていた。

何故、こんなもので。
何故、こんな気分になってしまうのか。

暑さでおかしくなってしまったのだろう、とアタシは思う。
わんこが今のアタシを見たら、威嚇するように吠え続けたりするのだろうか。

それでもいい。
たとえそうであったとしても、今のアタシには、この感覚を味わえれば十分だった。

…もし、これよりももっと強烈な匂いを嗅いだら?
考えただけでも身震いする。

もしこの匂いよりも、もっとアタシの気分を昂揚させるものがあるのならば。

その存在を頭の片隅に思い浮かべながら、アタシは長椅子からゆっくりと立ち上がり、覚束無い足取りでシャワーを浴びに向かった。



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