過去ログ - 佐久間まゆ「いつもあの子がそばにいる」
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5:aho ◆Ye3lmuJlrA[sage]
2013/12/16(月) 21:36:28.07 ID:pFDECU7w0
 それはこっそり録音したプロデューサーの音声の中から、特にお気に入りのものをお気に入りの順番で編集した特製の音声ファイルだった。これを聞きながらだと学校の勉強も趣味の裁縫や料理も驚くほど捗るのだ。
 愛の力以外の何物でもない。

『元気か、まゆ』
「うふふ……♪」
『よくやった、まゆ』
「うふふふふ……♪」
『頑張ったな、まゆ』
「うふふふふふふ……!」

 陶酔の渦の中で笑みをだだ漏らす。さすがに自分で編集しただけあって、流れが完璧だ。聞くほどに自然と気持ちが盛り上がり、天上へと向かって駆け昇っていくような心地になる。
 そうして体を火照らせ息を弾ませ、そろそろと腕が伸びかけたところで、不意に。

『……愛してるぞ、まゆ……』
「……えっ?」

 甘い陶酔の中に漂っていた意識が一瞬で現実に引き戻され、まゆはベッドの上で跳ね起きる。
 聞き間違いかと思いながら少しだけ音声ファイルを巻き戻し、もう一度さっきの部分を再生した。

『……愛してるぞ、まゆ……』

 それは紛れもなく、恋しいプロデューサーの声で紡がれる、愛の囁き。
 しかし、

「……どういう、こと?」

 まゆは表情を硬くして、何度も何度もその音声を再生する。

『……愛してるぞ、まゆ……』
『……愛してるぞ、まゆ……』
『……愛してるぞ、まゆ……』

 繰り返される愛の囁きを受けて、胸の奥から一つの湧き上がってくる。
 それは、愛ではなく、恐怖。

「……私、こんな声録ってない……!」

 背筋に震えが走った。


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