過去ログ - 対木もこ「私と荒川憩のカレーうどん戦争 02」
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4: ◆cvvZKri7SI[saga]
2014/01/08(水) 14:13:39.61 ID:NVDGXRYwo

──遡ること前日。

「……」

 学校から帰り、自室の携帯が鳴り響いた。
 鞄を鞄掛けにひっかけ、充電器にさしっぱなしだった携帯電話を開く。
 そこには、知らない電話番号が載っていた。
 というより、私の携帯の電話帳に搭載されている番号なんてたかが知れている。
 両親と学校と、最寄の交番くらいか。
 
 あとは、一人だけ個人の番号があるけれど。
 それは、今は関係のない話だ。

 正直に言って私は携帯など必要ない。
 両親だって本来はそう思っていただろうけれど、高校に入った折だからということで、半ば無理矢理持たせたに近く、私自身はまるで必要と感じたことは一度もなかった。
 
 その証拠に私は携帯電話を持ち歩いたりはしない。使わないものを持ち歩いていても邪魔だし、落として悪用されたら面倒だからだ。

 多分に、両親も、私に携帯電話が必要だとは思っていないだろう。
 普段持ち歩いていない事も知っているはずだ。
 別段自室に鍵は掛けていないし、入るなとも言っていない。
 掃除だったり何だりで、私がいない間に私の部屋に入ることもあっただろう。
 そしてその度に、自室に置かれたままの携帯電話に気付いただろう。

 だけれど、それについて私が何か言われたことは一度もない。

 両親との微妙な距離は、年を重ねるごとに広がっていく。

 おはようございます、いただきます、ごちそうさまでした、いってきます。
 ただいまかえりました、おかえりなさい、おやすみなさい。

 これだけあれば、私と両親の会話は殆んど埋まる。
 これ以外の言葉を最後に両親に向けたのは、何年前だったか。


 笑ったり泣いたり怒ったりしたのは、もう記憶にすらない。


 記憶にある出来事なんて、きっと。

「……」

 そっと左目のリボンに手を触れる。

 携帯電話も、家族の溝も。
 あれさえなければ、違っていたんだろうか。

 なんて。
 そんなこと。

 ただの、詮無い仮定だけれど。




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