過去ログ - 対木もこ「私と荒川憩のカレーうどん戦争 02」
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5: ◆cvvZKri7SI[saga]
2014/01/08(水) 14:14:07.32 ID:NVDGXRYwo

 私は別にそれでも困らないのだけれど、両親は違ったのだろう。
 先ほどは「私の両親の会話」と言ったけれど、少し語弊があった。
 両親は私に対して出来る限り明るく接し、多く語り、良く尋ねる。

 学校はどうだとか。
 勉強はどうだとか。
 麻雀はどうだとか。
 友人はどうだとか。

 ありふれてありふれた質問を、優しく辛抱強く聞いてくるのだ。
 だけれどそれに対して私が返す言葉などろくになく。

 適当に首を横に振り、適当に首を縦に振り。
 曖昧な表現でもって、
 曖昧な態度でもって、
 曖昧な目線でもって、
 そうしてやがて両親が困ったような微笑を浮かべて、会話が終わる。

 私にとって会話は苦痛であり、両親にとって私は苦痛なのかもしれない。
 そして私はそれでも良いと思い、両親はそう思わなかった。

 だから私が高校に入学した際に、半ば無理矢理にでも携帯電話を買ったことは、正直に言って意外だった。
 私と両親の間の溝のようなものは年々広がっていっていたし、それを阻止するためか両親が私に強くものを言ったことは一度もなかった。
 そんな両親が、難色を示した私を押し切ってまで携帯電話を買ったのは恐らく、切欠だったのだろう。
 切欠づくり。

 コミュニケーションの切欠に携帯は、確かに有効だ。
 顔を見なくても電話が出来るし、会話が面倒ならメールと言う手段をとる事も出来る。

 両親は表立っては“帰り道が心配だから”とだけ言って私を言いくるめたけれど、それだけではないことくらいは、なんとなくだけれど私にも分かった。

 尤も。分かっただけで、理解はしていない。


 この四ヶ月間で、私が両親と携帯を通じて話したことは一度もないのだから。

 それに。どうせなら今ではなく、あの時持たせてくれればよかったのに。
 今更渡されても、もう遅い。




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