27: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 22:46:51.42 ID:dnfxQ29l0
大きく息を吸い込んで初めの一音を慎重に打鍵する。
強弱記号に指示されているよりも更に弱く、それでいて確かな音が響くように。
下手くそな僕がそんなことを考えても、あっという間に破綻してしまうことは
目に見えていたけれど、僕の身体へのせめてもの抵抗だ。
28: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 22:49:36.04 ID:dnfxQ29l0
余韻と言うには烏滸がましいけれど、妙な満足感に浸りながら
僕は店長に目を向けた。
呆けた様子の店長は僕の視線に気づいて、
29: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 22:55:22.00 ID:dnfxQ29l0
店長が店の奥に戻ってしまって、僕の演奏を聴く人は誰もいなくなった。
後はいつも通りの曲のローテーションに戻るだけだった。
ローテーションに入ってすぐに店員さんが出勤してきたけれど、
僕には目もくれず、お店の中に入っていってしまった。
30: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 22:58:45.23 ID:bXUUoVJp0
店員「じゃあお先失礼しますね」
店長「おう、お疲れさん」
その会話を聞いて、ようやく夕方になったことに気がついた。
31: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 23:04:53.07 ID:bXUUoVJp0
お店を開けたまま食べる夕食の席で、珍しく店長は無言だった。
いつもの銀色の缶ビールではなく、ウイスキーを煽っていた。
僕は食事を終わった途端に相棒を弾き始める。
ヘッドホンから音を出すようにして、変わらないローテーションを始める。
32: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 23:09:08.53 ID:bXUUoVJp0
店長「おう、じゃあ……店じまいに……すっかあ……」
また僕は時間を忘れていたらしい。
辺りを見回せば、どの家にも明かりは灯っていなかった。
33: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 23:12:08.39 ID:bXUUoVJp0
?「それじゃあ、少しは変わったんですかね」
男「……はあ?僕は昔のことはあまり知らないので……」
店長「男ぉ……お前誰と喋ってるんだあ……?」
34: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 23:16:37.32 ID:bXUUoVJp0
そして、店長の首のあたりを両手で掴み、強引に顔を上げさせた。
?「ただいまっ!」
店長「……は?」
35: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 23:22:14.40 ID:bXUUoVJp0
店長「お前がラヴェルなんかを弾くからだ!」
娘「はいはい、親子が再会できるきっかけを作った恩人になんてこと言うの!それよりも、具合悪いならさっさと
トイレにでも行って吐いてきなさいっ!」
36: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/01/17(金) 23:32:33.37 ID:bXUUoVJp0
娘「あー……そうだったんだ。私のお母さんが死んじゃった時にね、喧嘩したの。お父さんと」
男「……」
娘「続けるね。喧嘩の内容なんて、どうでも良い事。そして、どうしようも無い事だったの。お母さんが
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