4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/01/28(火) 22:34:20.04 ID:4dDXRU7No
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「俺も手伝うよ」
「いえ、Pさんはそのまま休んで下さい」
しゃー、という蛇口からの音は、翠の素手に降りかかってはスポンジに吸収されていく。
それを皿に押し付けて汚れを落とすと、もう一度水洗いをして隣へ重ねる。
昼食も程々に終えると、残り僅かになった料理を見つめて翠は嬉しそうに微笑み、そのまま台所の方に向かって後片付けを始めてしまった。
当然ながら俺も手伝うと申し出たのだがそれだけは譲ってくれず、俺はこうしてお茶をすすっているという訳だ。
これも昔からの慣習というべきものか、このやりとりだけは変わらずにいた。
軽く腕をまくり、長い後ろ髪を揺らしながら楽しそうに洗い物に勤しむ翠を、卓上から眺めて茶をすする俺。なんとも奇妙な状況である。
それがプロデューサーと担当アイドルだというのだから尚更だ。
見つかりでもすれば一体何を言われるのやら、ともしかしたら来るであろう未来を思い浮かべていると、きゅ、という蛇口を捻る音がした。
前々からずっと古いのは変わらないどころかどんどん古くなっているこの部屋では、全てにおいて音が増幅されている。蛇口など最たるものだ。
「終わりましたよ、Pさん」
大皿を使うことで洗う食器の数を減らしたのが功を奏したのか、およそ十五分も経たずして洗い物を終えた翠はまくっていた袖を戻して再び対面に座った。
「ありがとう」
「ふふ、どういたしまして」
アイドルだというのに家事一つ終えて満足気に座りこちらを見つめる翠の姿に、俺はどうしたものかと苦笑してしまう。
別に家政婦が欲しくてスカウトした訳ではないのだ。
……無論、彼女自身もそういうつもりではないとは思うのだが。
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