過去ログ - 男「街中ラプソディー」
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11: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:52:24.03 ID:bTme5qlW0
さて、短くて申し訳ないですが、初回はこんな感じです。

時間が少々開くと思いますが、暇な時に見ていただけると喜びます。

では失礼します。


12: ◆ukweaVAfH6[sage]
2014/02/05(水) 08:21:11.68 ID:VKFFUCed0
おはようございます。

次回投下は週明けになる予定です。よろしくお願い致します。


13: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:27:43.42 ID:HH7rzBHw0
さて、週明けと言いましたが思いの外時間ができまして、それなりに書けましたので
投稿してまいります。よろしくお願いいたします。


14: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:28:36.71 ID:HH7rzBHw0
〜悪魔のラプソディー Op.2〜

僕が喫茶店シンフォニーを勝手に喫茶店ラプソディーへと改造してから早3日、いまだに僕はコーヒーを淹れていない。いくら素人の僕でもこの店が喫茶店として機能していないことは簡単に分かった。必須要素であるお客がいないのだから。

しかし、お客が来ないおかげで黙々とピアノの練習ができたのは、不幸中の幸いなのかもしれない。雑用を発注する師匠も居ないわけだし……。もしかしたら、師匠は『自分がいないほうが僕の練習時間が増えて、成長に繋がる!』なんて殊勝な考えに基づいて、旅に出たのかもしれない……。あの残念な師匠のことだから、万に一つもあり得ないけれど。
以下略



15: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:29:03.77 ID:HH7rzBHw0
「ふぅ……」

もはや開店後の日課となったハノンを弾きとおすと、時計の針は一回りとまではいかないものの、四分の三程度進んでいた。単調な練習曲だからつい飽きてしまいがちになるけれど、一日に一度は弾かないと腕がなまってしまうような気がしてならない。だからこそ僕は一日のルーティーンの中にこの練習曲を組み込むようにしている。

「……よし」
以下略



16: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:29:32.44 ID:HH7rzBHw0
2分を切るような短い曲だけれど、少し速いスピードで弾きこなした時の爽快感が好きで、演奏者としてはとても好きな楽曲だ。スピードを保ちながらも音の粒が潰れてしまわないように心掛ける。僕の弾いた一音一音を切り取っても、喫茶店の隅々まで響くように。

「……」

会心の出来とは言わないものの、今日の調子はそれなりのようだ。ミスタッチが無いのは当然としても、リズムのぶれも音のぶれも少なかったのではないだろうか……。
以下略



17: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:30:07.18 ID:HH7rzBHw0
「……つまんない」

声の方向に目を向けると、それこそグリム童話の主人公のような、デパートで売っている人形のような、金髪蒼眼の女の子が入口のドアに背をもたせて立っていた。

「……初対面なのに随分とご挨拶ですね」
以下略



18: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:30:38.22 ID:HH7rzBHw0
「つまんないものはつまんないんです。あなたの演奏は誰に向けているものでもない。完全に自分の満足のためのものです。そして、あなたはミスタッチがなく、楽譜のとおりに弾けるという些細なことだけで、満足してしまっています。だから、つまらない」

「……」

「少なからず図星と思う部分があるようですね。悔しそうに私を睨みつける元気があるのならば、まだ改善の余地はあるのではないかと思います。例えば、もっと感情を籠めるとか」
以下略



19: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:31:14.28 ID:HH7rzBHw0
そう言って少女が差し出す手を僕がすんなりと握ったのは、言われたことが図星だったからというわけでも、師匠が派遣した先生だからというわけでもない。僕は、どうしても抜け出したかったのだ。師匠から凡人と言われ続ける底なし沼のような状況から。そして、そのためなら藁だろうとすがる。そんな意思を持っていたからに過ぎない。決して、この少女を信頼したわけでも無ければ、仲良くなりたいと思っているわけでもない。丁重に扱っているのだって、機嫌を損ねなれて指導してもらえないといったリスクを考えているだけだ。

「とりあえず、コーヒーでも飲みましょうか」

そういって無垢に微笑む笑みは、僕に受け入れられた安堵に満ちているような気がして、心に僅かな罪悪感を覚える。しかし、そんな罪悪感で揺らぐような僕の意思ではない。仮に、この少女が指導に適さないと思えば、追い出してしまおうとさえ思っているのだから。
以下略



20: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:31:45.01 ID:HH7rzBHw0
「コーヒー、美味しいですね」

少女は口を付けてすぐに目を丸くして驚いている。僕も確かに、この喫茶店のコーヒーを初めて飲んだ時にはあまりの美味しさに驚いた。師匠曰く、『昔は世界中で演奏会を開いてたからさー、各地の農場のおっちゃんが私に惚れ込んで安く良い豆を送ってくれるんだよね』とのことだった。正直に言えば演奏旅行の最中に何しているんだこの人はと思ったけれど、あまりにも美味だったため、思わず師匠の不真面目さに感謝してしまった記憶がある。

「……んー、本当にこれならば何杯でも飲んでしまいそうです」
以下略



21: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:32:12.77 ID:HH7rzBHw0
……僕はそこで唐突に魔がさしてしまった。キーシンの演奏をリクエストするぐらいなのだから、他の演奏者の演奏をかけたらすぐに違うと分かるはずだ。僕が手に取ったのは、ルガンスキーの演奏だった。どことなくキーシンに類似している部分があるような気がするし。僕はあまりピアニズムの違いというのはわからないのだけれど……。やはり、こういった部分が、機械だと言われてしまう理由なのかもしれない。

ショパンのバラードOp.47、所謂バラードの3番だ。演奏者としての観点で言えば、4つのバラードの中では最も簡単だと思うけれど、どうにも弾いた気がしない曲だ。僕に欠けているらしい、感情表現が大いに求められる曲だと言うことなのだろうか。



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