過去ログ - 千早「先生と私」
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1:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/02(日) 20:29:21.23 ID:bEFC5GTXo
 動きを止めたメトロノームを手に取ってゼンマイを巻いていると、ふと、傍の階段に一人座ってこちらを見ているのに気付いた。
 聞こえるように溜息をついて、顔をしかめながらちらちらと視線を投げても、腰を上げる様子がない。鬱陶しい、と言うわけにもいかなかった。階段に座る彼の年齢は確か二十八で、少し皺のついたスーツと汚れたスニーカーが似合うステレオタイプな――教師だったから。
 鬱陶しいのであっち行ってください、なんて口が裂けても言えないのだった。

「何か用ですか」
 遠まわしな言い方なら、きっと許されているはずだった。

「いや、別に」
「そうですか。暇なんですね」
 吐き捨てるように嫌味を言って、私はゼンマイの巻き終わったメトロノームを窓枠に置いた。
奥行きのある窓枠、その向こうにはモダンな造りの校舎と若葉を纏う木々。
それらの間を縫うように生徒たちが歩いている。
きっと春の濃い匂いは薄れ始めていて、五月特有の爽やかな風が揺らしているのだろう。

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