176: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:32:15.63 ID:bXxSq3Ge0
しょうがない。手当たり次第に段ボールを開けていく。
お皿とかフライパンとか。この箱じゃない。
こっちは……また洋服。ハンガーは入っていないみたい。
これはかなり重いから、多分本とかが入ってる箱かな。多分これじゃないけど、一応開けて……
177: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:35:14.85 ID:bXxSq3Ge0
なんでこんなところに?
混乱しながら葉の枚数を目で数える。いち、に、さん、よん……
四葉の、クローバー……?
乃莉ちゃん!
178: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:40:46.98 ID:bXxSq3Ge0
1年前の、ひだまり荘への引っ越しの日と、同じ道を同じ自転車で走っていく。
去年は不安で胸がいっぱいだったけれど、今は違う。
だって、どんなに不安でも、怖くても、寂しくても、変わっていく勇気をひだまり荘で貰ったんだから。
179: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:42:45.76 ID:bXxSq3Ge0
なずな「ねえ、乃莉ちゃん、言ってたよね。私に引っ越してラッキーだったって思えるようになってほしいって」
乃莉「へ?……ああ、クローバー探してたとき?」
なずな「うん」
180: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:44:35.18 ID:bXxSq3Ge0
なずな「私の大好きな人が、願っていてくれるから」
なずな「これからの私が、きっと幸運であるように、って」
乃莉「……それって」
181: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:47:24.63 ID:bXxSq3Ge0
もっと大切なこと。一番大切なこと。
それを、どんなふうに言葉にすればいいのか分からなくなって、言葉を繋げられなくなった。
そんな私を見る乃莉ちゃんの表情が、ふわりとした優しい微笑みに変わったのが、私の目にスローモーションで映る。
ふと視線を落とすと、その時初めて四葉のクローバーをまだ手に持っていたことに気づいた。
その四枚の葉が、まるで私にきっと大丈夫、と語りかけているように感じられた。
182: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:48:42.79 ID:bXxSq3Ge0
目を開くと、風がそよいだ。
柔らかい空気を感じて、何故だか、季節が巡ってまた春がきた、と思った。
新しい季節に、新しい大切な風景が、きっとまた生まれる。
だから。
183: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:50:00.75 ID:bXxSq3Ge0
なずな「乃莉ちゃん、大好き」
184: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 09:54:39.96 ID:bXxSq3Ge0
乃莉「……なずな」
なずな「変かもしれないけどね、私、ずっと……」
乃莉「ううん」
185: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:13:48.45 ID:bXxSq3Ge0
突然、私を抱きしめる乃莉ちゃんの腕が緩んだ。
私が顔を上げるよりも早く、乃莉ちゃんが私の手を取った。
乃莉「なずな。こっち」
186: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:20:48.00 ID:bXxSq3Ge0
一面に生い茂るクローバーの緑の中に、たったひとつ、白く可憐な花が咲いていた。
乃莉「なずながいてくれるからだよ」
187: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:23:43.01 ID:bXxSq3Ge0
乃莉ちゃんはそういったきり、何も言わずに私をずっと見つめていた。
私も言葉が見つからず、だんだんと目頭が熱くなるのを感じながら乃莉ちゃんを見つめ返す。
風が二人の間を通り抜けていった。
もうすっかり暖かくなった風は私の頬を優しく撫でていき、目の奥に溜まった涙を乾かしてくれる。
188: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:24:23.65 ID:bXxSq3Ge0
乃莉ちゃんが急に手を伸ばした。
そちらを振り向くと、風に吹かれて飛んでいく鮮やかな緑色が見えた。
私はようやく手に何も持っていないことに気づいた。乃莉ちゃんから貰った四葉のクローバーが風で飛ばされちゃったみたい。
駈け出そうとする乃莉ちゃんの腕を思わず掴む。
189: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:27:06.42 ID:bXxSq3Ge0
飛ばされていった四葉は、一面のクローバーの中に消えて行った。
それはなんだか、いつか誰かがこの場所で幸運を捕まえることを待っているように思えた。
……私には、もう必要ないよね。
だって、ここにはもうこんなにも幸せがあるのだから。
乃莉ちゃんの目をまっすぐ見つめ、手を握る。
190: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:49:19.59 ID:bXxSq3Ge0
四月、私は高校2年生になった。
春の息遣いはますます濃くなり、そよ風は季節の色に輝いているよう。
私は1年間過ごしたひだまり荘を出て、今は家族と一緒に暮らしている。
不思議とひだまり荘での日々は遠い幸せな思い出のように思えて、それを懐かしむことはあっても寂しい気分になることはあまりない。
他にも学校のこととか、いろんなことが急激に変わって、毎日がすごく慌ただしくすぎていくけれど、
191: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:50:47.36 ID:bXxSq3Ge0
放課後
なずな「乃莉ちゃん、おまたせ」
乃莉「あ、なずな。結構遅かったけど、何かあったの?」
192: ◆K27FRRVqmQ[saga]
2014/08/03(日) 10:53:43.43 ID:bXxSq3Ge0
なずな「乃莉ちゃん」
乃莉「ん?」
193:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/03(日) 12:03:28.84 ID:N2xKlLmDO
二人は幸せなキスを……してないのか
乙
なずのりは良いね
194:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/03(日) 14:27:44.56 ID:JrzYOzHAO
乙
素晴らしかった
195:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/08/03(日) 21:09:31.96 ID:SVjUTULI0
乙
196:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/04(月) 08:22:03.57 ID:XnDCp2mAO
乙…
貴重なひだまりSSを真面目に書いてくれる作者さんには感謝
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