2: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:02:15.06 ID:lp9qmKb80
何してるんですか、と僕が声をかけたのかもしれない。それとも僕が近づいた足音に気付いたのかもしれない。
なんにせよその人はゴミを漁る手を止めて振り返った。
「何だお前、子供がこんな時間に出歩いてちゃあ駄目だろう」
3: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:06:44.79 ID:lp9qmKb80
電子レンジを持たされておねえさんに連れて行かれた先は、近所でも有名なガラクタ屋敷だった。
なるほど、ここの人だったのか。
大きめの門を潜った先は、まるでアンティークショップのようだった。
4: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:13:53.88 ID:lp9qmKb80
家の中も庭と同じく懐かしい雰囲気がする物ばかりだった。
というか物が多すぎて人間が活動するスペースはほんの少ししか残っていなかった。
「そいつはそこに置いといてくれ」
5: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:19:06.23 ID:lp9qmKb80
次の日の昼下がり、おねえさんは僕を隣町の商店街に連れて行った。
「ここは作られた懐かしさだけど、それでもちょっと落ち着くんだ」
ボール電球形のLEDから発せられる淡いオレンジ色の光に照らされた真新しいレンガ舗道を眺め、おねえさんは目を細める。
6: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:25:42.79 ID:lp9qmKb80
同じ景色が続いた後、レンガの上に佇む古いストーブが目に入った。小学校の頃、冬になると教室に現れたあいつだ。
ストーブの隣のシャッターは開いていて、その奥に置かれているテーブルを挟んで二人の男の人が向かい合って座っていた。
「ギョクさん、久しぶり」
7: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:30:26.82 ID:lp9qmKb80
「ほらオウさん、ケイちゃん来たよ」
ギョクさんより少し体格のいいその人はオウさんというらしい。
「ん? 何だお前、また来たのか」
8: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:35:08.55 ID:lp9qmKb80
「この子は?」
オウさんの王に王手をかけてギョクさんが僕を指差す。
「拾ったんだ。捨てられたって言ってたから」
9: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:40:25.22 ID:lp9qmKb80
「おいケイ、こいつはなんて名前なんだ」
「あ、まだ付けてないや。うーん」
そういえばそうだ。捨てられたんだから、今までの名前はもう使えない。今の僕は名無しだった。
10: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:42:27.59 ID:lp9qmKb80
>>9
×「お前は今日からコウだ。コウシャのコウ」
○「お前は今日からコウだ。香車のコウ」
でした
11: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:47:35.06 ID:lp9qmKb80
その帰り道。突然おねえさんがこんなことを言いだした。
「いいかキョウ。人ってのはな、自分に似たような場所に居るととても落ち着くんだ。逆に、自分に似ていない場所に居るのは凄く疲れるんだ」
心から落ち着いたようなおねえさんの笑顔を思い出して、少し胸が締め付けられたような気がした。
12: ◆4z2E.PK0ZYHD[saga]
2014/03/09(日) 01:53:48.25 ID:lp9qmKb80
スーパーで買い物をして、僕たちは家に帰った。
今おねえさんはキッチンで食材を切っている。スーパーで「何が食べたい?」としきりに聞いてきたから、多分親子丼を作ってくれてるんだろう。
ジュウジュウとつゆの煮える音といい匂いが家の中を満たす。
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