180:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/04/28(月) 18:37:52.50 ID:S3TlNWjd0
10:雨のち未来
時は深夜。空に星は無い。
灰色の雲が天を覆い、ただ分厚いそれが、下界を見下ろしていた。
「それで……」
街灯点る公園の一角で、男が呟いた。
静かに、だけど固く、鉄の様な冷たい声だった。
「なんのつもりだ、幸子……こんな時間に。こんなところで」
「まぁ焦らないで下さいよ、プロデューサーさん」
若干の責める感情があった男の言葉に、けれど幸子は軽く受け流す。
にこりと笑みを向け、ただ淑女然としていた。
「お前、女の子が、こんな遅くに外に出るなんて――――」
それは男の本心の心配であった。
あったが、男の胸中は、それだけのものでもなかった。
彼は、恐れていた。
事務所を賑わせてしまった、件の出来事。
今夜、彼女が自分を呼び寄せたのは、間違いなく、そのことに関係がある。
それが、ただ怖かったのだ。彼女の口から、何か良からぬ事が出るのではないかと、怯えていたのだ。
男は、所属しているアイドルの一部が、自分にどう言う感情を抱いているか、知っていた。
知った上で、尚、同僚の女性に愛を抱いた。
知った上で、だからこそ、彼とちひろは秘密の付き合いだったのだ。
――もう少し、彼女達が経験を積み、年を重ね、自分よりもっと相応しい人間に出会う時が、必ず来る。それまで。それまでは――
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