1:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:08:15.34 ID:d82Zhadgo
ある日その若いミミズが、ひょっこり珍しく地面から首を出したとき、
彼の目にまず留まったのはたこ焼きだった。
ミミズの例に漏れず彼は酷く目が悪く、鼻も利かない。
そして今まで自分以外の誰かと出会ったことがない。
ミミズが見たのは、自分へとうっすら注いでいるぼんやりした光と、
それを遮る美しい円形の影。
土の中で飽きるほど彼は暗闇を見慣れている。
しかし、土の中でこんなに綺麗な形を闇がとったことはなかった。
頭の先にある円、たこ焼きを、ミミズは障害物、ただの物体だとは思わなかった。
彼の行く手をこれまで何度も塞いできた石などの様々な障害物たちは、
必ずもっとゴツゴツしていた。
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2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:12:07.04 ID:d82Zhadgo
障害物でなければ何だろう?
ミミズはそれからあまり悩むことなく、ごく素直な気持ちで確信した。
障害物でないとしたら、生きているに違いない。
3:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:14:55.84 ID:d82Zhadgo
ミミズはたこ焼きが何も喋らず、その場から立ち去ろうともしないことから、
少なくとも相手が自分に悪い気持ちを抱いていないと考えた。
話しかけても問題はないはず。決死の思いでミミズが言葉を発した。
4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:17:04.08 ID:d82Zhadgo
どんな無礼をしてしまったのだろう? ミミズは頭をフリフリ思考する。
「こんにちは」がおかしかった? いや、そんなはずはない。
明るさを感じるということは今は夜ではないはずだ。
5:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:19:19.18 ID:d82Zhadgo
しかしだからといってこのミミズを、
他のミミズたちと比べてひどく劣った愚か者だとみなすことはできない。
それどころか、たこ焼きを生き物と勘違いしたという失態に目を瞑れば、
彼の頭脳は優秀ですらあった。
6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:21:34.69 ID:d82Zhadgo
にもかかわらず、自分がどんな奇跡を起こしたかに気付かず、
ミミズはただただ恐縮している。
自分の無知を恥じて頭を垂れている。
7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:27:22.18 ID:d82Zhadgo
土のほどよく冷えた、あの慣れ親しんだ空間に帰りたい……。
もう、帰ろうか……。
うん、そうだ、帰ることにしよう。
8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/03/13(木) 20:27:32.43 ID:RTMZ6i/4o
なんだこの引き込まれるような題名は
9:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/13(木) 20:31:26.85 ID:d82Zhadgo
「あのね、僕は見ての通り土生まれ土育ちの世間知らずな若造なんだ。
それも長いこと外気に曝され続けるのすら初めてなくらいの奴さ」
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