4:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:17:53.43 ID:I629TTwQo
どうしてあかりの磁石がここにあるのだろう。
間違えて持ってきてしまったのか、借りたまま返してなかったのかもしれない。
砂鉄集めをしていたのはもう何年も前のことだから、それからずっとあかりの磁石は私の部屋にあったことになる。
ふたつの磁石をもてあそんでくっつけたり離したりしながら、なんだか無性に懐かしくなった。
5:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:18:24.59 ID:I629TTwQo
「うん、子どものころ集めてたやつ」
「今も子どもでしょ」
6:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:19:01.00 ID:I629TTwQo
母親のそっけない言い方に私は傷ついた。
だけどしかたない。
私が自分で捨てたのだ。言われてみれば、そんな記憶がある。
きっと幼い私は、ある時点で「砂鉄を集めるひと」なんかにはなれないと気づいたのだろう。
7:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:20:02.20 ID:I629TTwQo
勝手な話だけど、私は罪悪感でいっぱいになった。
手に握ったままのふたつの磁石がズシリと重くなった。
小さいころの、あの河原に座って砂鉄を集めていた私が、私の手をひっぱっているようだった。
今、後ろを振り返ったら、あのころの私とあかりは、どんな顔をして今の私を見ているのだろう。
8:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:20:44.51 ID:I629TTwQo
部屋に取って返して、出かける準備をはじめる。
リュックサックにさっきの磁石と、必要な道具を詰め込む。
財布もある。方位磁石もある。携帯も、家の鍵も持った。
9:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:21:31.99 ID:I629TTwQo
あかりと結衣と私。
私たち三人が出会ったのは、それぞれの親が昔から友達だったからだ。
だから私たちの関係は、親たちには小さいころからほとんどすべて知られている。
10:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:22:06.81 ID:I629TTwQo
それからもう一つ定番のエピソードがあって、それはさらにもう少し小さいころ、家族で買い物に行ったときの迷子の話だ。
ひとりはぐれてしまった私は、「あかりちゃーん」と泣きわめいたという。
11:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:22:53.47 ID:I629TTwQo
だけど変わらないものなんてない。
なにもかもどんどん進んで、新しくなっていく。
私たちはどんどん大きくなって、今も成長していて、これからも違う私たちになっていく。
大人はそれを知らない。
12:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:23:33.46 ID:I629TTwQo
「行ってきます!」
うるさく何かを言っている母親を無視して、私は家を飛び出す。
13:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:24:19.12 ID:I629TTwQo
チャイムを鳴らして、息を整える。
いつものあかりの足音が聞こえて、それから玄関の扉を開いて出てきた幼なじみに、私は言った。
「あかり、砂鉄集めに行こうぜ!」
14:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[saga]
2014/03/24(月) 14:24:50.75 ID:I629TTwQo
◆
我ながらいきなりすぎる訪問だとは思ったけど、あかりは文句ひとつ言わずについてきてくれた。
これが結衣なら小言のひとつや百つくらいは言っていただろう。
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