19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/15(火) 05:50:47.47 ID:fX5a1w8N0
坂出慎(男子5番)は、デイパックとショルダーバッグを担ぎ、部屋から出た。
逆立てた金髪を生やした頭を掻きながら、外の緑いっぱいの空気を吸って、吐いた。
やっぱ外っていいよな?…あの部屋、血の匂いが充満していやがった…
慎は唇を噛んだ。
ふざけんな、あの進藤とかいうマッチョ野郎…
「慎!」
聞き覚えのある声を聞き、その方向を向いた。 不良仲間で短めの茶髪にパーマをあてている、井上稔(男子2番)が茂みから顔を出して、こっちにこい、と合図をしていた。 慎は稔の方に駆け寄り、再会の喜びを表して、右手同士をパンッと合わせた。
「良かったぜ。待っててくれないと思ってたよ、稔」
「何いってんだバーカ。 お前は信用してるぜ?」
2人はハハッと笑い声を上げた。
少し移動し、I=07エリアを抜け、森林公園の入り口付近まで来た。 そこで腰を下ろした。
「慎…どう思うよ?」
稔が口を開いた。
「あの進藤とかいうふざけた野郎…」
慎は拳を強く握り、地面を思いっきり殴った。
「オレはあいつをブッ[ピーーー]!
許さねぇ…あのマッチョ…中岡殺しやがって…」
ニッと稔が笑った。
「オレも同意見だ。さっすが、同じこと考えてたか」
担任の中岡は、パッと見はさえないおじさんだったが、慎にとっても稔にとっても大切な人だった。 小学生時代から荒れていた2人は、親にも見離され、先生達からも呆れられていた。 どの大人も、自分達を構わなかった。 むしろ、存在していないかのように扱った。 そのくせ、何か悪いことがあったらすべてを2人に押し付けた。 そのため、2人は’大人’という存在が大嫌いだった。
しかし、中岡は、そんな2人に他の生徒と同じように接してくれた。 時には叱ったりもするが、何かが出来たときは褒めてくれ、悩んでいるときは相談に乗ってくれた。 これは他の生徒達から見たら何の変哲もない事だったと思うが、2人にとってはそれがとても嬉しかった。
そんな中岡を、政府はあっさり殺した。
許せなかった。
「ブッ[ピーーー]…のはいいけどよ、どうやって…?」
慎は訊いた。許せない、だけど報復の仕方がさっぱりわからない。
「とりあえず…武器、見ようぜ。」
2人はデイパックのファスナーを開けた。
稔のデイパックから出てきたのは、クマデ(あの潮干狩り、とかいうくだらない遊びで使うやつだな)だった。 慎の支給武器は、スコップ(こっちは芋ほりで使うような鉄製の物)が出てきた。
溜息を吐いた。
「おいおい…オレらに砂遊びでもやれってのか?」
「いや…宝探しじゃねぇの?」
プログラムに参加した男子生徒2人が会場で金銀財宝を発見! 新聞のトップ記事はもらったぜ、イエイ! …おいコラちょっと待てよ? これでは復讐なんて出来るわけがない。 返り討ちだ。
「どーするよぉ…」
慎が頭を抱え込んだ。稔はしばらく考えた後、口を開いた。
「仲間…探すか?」
「仲間…かぁ…
でも、オレらみたいなヤツ信用してくれそうなのって…誰だよ?」
そう、2人はケンカもする、カツアゲもする、タバコも吸う、根っからの不良だった。 クラスでも浮いた存在だった。 そんな2人に、しかもこの状況で、誰が信用してくれるだろうか? おそらく、ほとんどの生徒は、この2人はやる気だ、と思っていることだろう。 ちくしょう。 こんなことになるんだったらボランティア活動でもやっとくべきだったぜ。
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