28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/15(火) 07:58:53.37 ID:fX5a1w8N0
女子の集団の中から覗いている茶髪は明らかに城ヶ崎麗(男子十番)のものなのだが、麗は常に満ち溢れる自信とエベレスト級のプライドの持ち主ながら身長は決して高くないので、その顔は卓也たちからは確認できない。
帝東学院中等部の生徒会長でもあり卓也や健太が所属するテニス部の部長でもある麗は、生まれつきの茶髪と白皙の肌と赤みがかった目が特徴的で、口許のほくろが非常に端正な顔立ちに更に色気をプラスさせていることもあり、女子人気は非常に高く今もその容姿に魅かれた他校生に捕まっているのだ。
麗には、カリスマ性が備わっていると卓也は思っている。
卓也は部活での付き合いがあるのだが、彼以上に部長らしい部長はいないと思うし、いつでもつい姿を追ってしまう。
咲良と奨は幼い頃から常に麗の傍から離れないし、紗羅は『麗に憧れて入学した』と豪語しているし、もみじは異様なまでに麗に心酔しているし、健太は麗をライバル視しながらも常に行動を共にしているし、深い人付き合いをしなさそうな瑠衣斗ですら常に麗に付き従っている。
それぞれが、麗に対し何かを感じているのだろう。
「城ヶ崎さん、何をされているんです?
そんな庶民たちの相手をされるなんて、やはりお優しいですね」
麗に群がる女子たちの間に割って入り麗の腕を引っ張ってその中から救い出したのは、麗を取り巻くグループの最後の1人、高須撫子(女子十番)だ。
麗に群がっていた女子たちが非難の声を上げるが、撫子に勝ち誇った笑顔を向けられると萎縮し、そのままどこかに行ってしまった。
撫子は華道の家元を祖母に持つお嬢様で、艶やかな長い黒髪に上品な言葉遣いと物腰、狐のように吊り上がった目元にキツさを感じるが“大和撫子”と呼ぶに相応しい咲良とは違うタイプの容姿に恵まれた女の子なのだが、恐らくこのクラスで最も家柄に対する偏見が酷い。
中等部から入学した人間に対して、普通に“庶民”という言葉を遣い見下している。
それはいつも行動を共にする健太・瑠衣斗・紗羅・もみじも例外ではなく、特に紗羅との折り合いが悪いように見受けられる。
「お前ら、買うモン決めたか?
とっとと買って、あっちにある喫茶店にでも入ろうぜ」
麗は髪を掻き上げながら仲間の元に戻ってきた。
クラス1の家柄で育った麗には、外の屋台やフードコートでご飯を食べるということは考えられないらしく、競合店がないからか値が張っているサービスエリアの喫茶店に入ることを当然のように提案していた。
健太たちの財布には少しきついのではないのだろうか、何となくそう感じたが、健太たち“庶民”も異議を唱えることはなくそれぞれ土産物の会計に向かったので、卓也と英隆は麗たちとは別れて胃に優しい物を再び探し始めた。
結局梅干しおにぎりを2つと自分たちの昼食を買ってから売店を出た。
ふとフードコートに目を遣ると、奥の方では恒祐たちが騒いでいたのだが、手前側にも見慣れた顔があった。
先に気付いたらしい英隆が、既にそちらの方に向かっていた。
「あ、ハルカワー!!」
最初に英隆に気付いて大声を上げたのは、クラス1小柄で小学生のように幼い広瀬邑子(女子十五番)、英隆の幼馴染だ。
その手元にはたこ焼きが置かれている。
「へー、たこ焼き売ってるんだ、おいしそうじゃん、邑ちゃん」
「じゃあ1つおすそわけ、どーぞ!」
邑子は持っていた箸でたこ焼きを1つ持ち、英隆の方にやった。
それは所謂“あーん”なのだが、英隆もさして気にも留めない様子で差し出されたたこ焼きを口に入れ、美味しさに顔を綻ばせた。それを見ていた小石川葉瑠(女子五番)と平野南海(女子十四番)と山本真子(女子十九番)がにやにやしながら「おおー」と声を上げた。
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