72: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 01:04:26.49 ID:9NO0r5n60
あたしの能力の範囲内に感知できる能力者の数は二。つまり、この屋敷の主と、先ほどの彩人。
助けを呼べば来るだろうか。例えば悪即斬。いや、屋敷の主が悪であるならまだしも、何もない状態では加勢をしてはくれないだろう。最低限、あの正義バカが屋敷の主を「悪」と認定してくれなければ。
弱肉強食は猶更駄目だ。あいつを呼んだところで来ちゃくれないだろうし、来ても結局あたしが襲われるのが眼に見えている。
猪突猛進も邪気眼も死んだ。手駒はもうない。
まさかムムが助けてくれるはずもない。やはり、どうやらあたし一人でなんとかしなくちゃならないらしい。
漆喰に固められた囲いに向かって猟銃を向け、跳弾は心配だったが、そのまま引き金を引く。またもや両腕が弾け、今度は体ごと跳んで尻もちをついた。
囲いには穴こそ開いたけれどびくともしていない。力技ではやはりだめだ。
方法は二つ。家主を殺して悠々と出ていくか、何とかしてこの敷地内から出るか。
正門は論外。いや、もしかしたら案外出られるのかもしれないけど、敵がいるであろう屋敷に背を向けることが恐ろしすぎる。最後の手段にしかならない。
壁は壊せないことが分かったし、ならば裏口でも探すか?
壁に背を向け、どこからでも襲撃が来てもいいように心構えをしつつ、あたしはじりじりと裏口や勝手口、壊れた穴がないか探す。結果は何もなかった。ひたすらに漆喰塗の塀が続いているだけだった。
違和感を覚えるレベルの殺風景さに、あたしは内心で訝っていた。どこまでが能力なのだろうか。それとも、全てあたしの勘違いだったとでも。
思考が二転三転し、あっちへふらふらこっちへふらふら、まとまりがない。
と、歩いているうちに、屋敷の玄関が見えてきた。元の場所へと戻ってきてしまったのだ。
何もないことがわかったことは収穫だったが、それは殆ど徒労と同意義。
仕方がない、最後の手段を取ろうかと、視線で門を見やって、あたしは唇を噛み締めた。
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