過去ログ - モバP「見えた今に絶えぬ未来を」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 22:51:44.67 ID:dbLyof+Po


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「お疲れ様です、プロデューサーさん」
 流星のような車のヘッドライトが外を明るく照らす夜。
 ぱたん、と簡素な扉の音を立てて事務所に入ってきた事務員の千川ちひろが机に座っている俺にそう挨拶をした。

 決して定時を過ぎてから入社してきた訳ではない。
 一度出社をし、会議をしてから彼女は事務所を発ったのである。
 というのも、今日は仲の良い同業者と今後のコラボ戦略の打ち合わせに行っていたのだ。
 事務員といいつつあちらこちらへと動き回る仕事ぶりを見れば対外的にも優秀な人材だと胸を張れるのだが、何故か打ち合わせを相手の事務所の中ではなく相手の自宅で行うのは如何なものだろうか。

 ちひろさんが隣の席に座ると、ふわりとした良い香りの中に微かにおいしそうな料理の匂いがした。
 その匂いはともかくとして、彼女の香りというものはこの席に座っていらい長らく親しんできており、俺の日常的感覚として入り込みつつある。

「話し合いはどうでした? いいの持ってこれそうですか?」
 小さな鞄を机において着席し、おもむろにコンピュータを起動したちひろさんに話しかける。
 彼女の話では、相手方の事務所とのコラボで攻勢をかけよう、という魂胆らしい。相手は超の付くほどの有名な事務所なので難しいかもしれないが、これが実現すれば飛躍的な活躍を期待できるだろう。
 んー、と少し体を伸ばして少し間を置くと、ちひろさんは良い心地のまま返事をした。
「ええ、そりゃもう美味しいのを……いえ、良い案件を提示してくれました」
「ごまかせてませんよ」
 どうせ話し合った後どこか美味しいレストランで食事でもしてたんでしょうに、という言葉は使わないでおいた。
「まあ、それなりに成果はありましたよ。相性の良い子を見繕ってますので後で確認お願いしますね」
「わかりました。ありがとうございます」
 色付きのクリアファイルから資料を幾つか取り出すと、それを俺に渡してくる。
 それはどうやら相手先との仕事のインデックスのようで、印字と手書きの文字が混じりながら雑多な情報を載せていた。

「さあ、始めますか」
「はいっ。今日は日が変わる前に帰れるといいですね!」
 無理なことを承知で彼女は毒を吐く。
 せっかく気合を入れたのに萎えるような事を言わないで欲しい、と伝えると、悪びれること無く彼女はおどけてみせた。




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