過去ログ - とある科学の合成合唱<カンタータ>
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6:サルダナパールの死  ◆wapTtVzPxk[sage saga]
2014/04/25(金) 21:23:41.12 ID:tU3kNuw60

「楽勝だ、レベル5」


 一〇月九日は楽演都市の表側に住まう者たちには――少しばかり事件の多い――ただの休日だった。一方、楽演都市の裏側を知る者たちには血腥いお祭り騒ぎのような日だった。


『ええ。検体番号二〇〇〇一号「最終信号」の命の危機に関する情報です』


 統括理事会の一員である親船最中が襲撃され、暗部組織の大半が壊滅し、二人の超能力者が大敗を喫し、一人の無能力者が類を見ない勝利を飾った。上から下まで玩具箱をひっくり返したような騒乱の日は幹線道路のスクランブル交差点で幕を閉じた。


「テメェが最終信号と一緒にいた事は分かってんだよ、クソボケ」


 この世には存在しない音が響き渡る。ヒトが出しえないのは当然のこと、人間が知り得るどんな物理現象においても生じるはずのない音がビルとビルの狭間を飛び回った。明るい茶髪の青年がスクランブル交差点の真ん中に倒れ伏したことで勝敗は決したかに見えた。

「待つじゃんよ、一方通行!!」

 一人の丸腰の女が拳銃を持った少年の前に進み出る。女は撃たれず、少年の手にあった拳銃から弾丸が零れ落ちる。その、まるで物語の中のような馬鹿みたいな結末に呆然としていた少年の思考が異音によって遮断される。

「動きを止めたきゃ殺せば良い。気に食わないものがあるなら壊せば良い。救いなんか求めてんじゃねぇ!!」

 遠巻きに人々が立ちすくむ中で、平和な結末が蹂躙された。そして悪魔が目覚めの咆哮をあげる。

 楽演都市は四六時中そこかしこに歌が溢れかえっている場所だ。この街の、特に繁華街の大通りで人の歌が聴こえないことなど通常ありえない。今そのありえない状況の中で聴こえるのはこの世のものではない二種類の音だけだ。

「――yjrp悪qw」

「ちくしょう。……テメェ、そういう事か!! テメェの役割は――ッ!?」

 見えないはずの音が強大な力のあまり、人々の目に翼の幻影を見せる。絶望と暴虐の泣き声は、もう一つの音が死んでも鳴り止まなかった。

 漏れ出す感情の切れ端だけで世界をすり潰しかけていた迷子を、最後の希望が迎えにくるまで。











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