過去ログ - 「きみは水死体」
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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/04/27(日) 15:10:12.21 ID:GsTqztVz0
「俺は東京湾の亡霊」
 ………。
 意味がわからなくて眉間にしわを寄せると、さらに彼は続けた。
「要するに」
 そう言ってこちらを見たと同時に、たん、と軽く地面を蹴って飛び───そのまま空中に浮いた。
「ユーレイ」
 口と目が自然と開き、思考が一瞬停止した。
 ユーレイ、ユウレイ、幽霊……。
 幽霊ならば浮くことくらいできるだろう、しかし。
 目の前で起きてる非現実的な現象を、頭で処理しきれない。
「ゆ、ゆうれい」
 バカみたいな言い方で、彼の言ったことをリピートする。
「そう、俺は幽霊。この東京湾で溺死した、さまよう霊」
 ──夢なのか?それにしては、雨の当たる感触がやけにリアルだ。
 混乱する私の頭を気にせず、彼は次々と続ける。
「しかしながら、今時自殺に水死を選ぶとは、なかなかに古いね。今のご時世、首吊り、飛び降り、それから……練炭、睡眠薬あたりが主流じゃないかな?」
 考える量が多すぎてまともな返答もしにくいが、一応返す。
「いや、あの」
「ひょっとしてただダイビングを楽しもうとしていただけ?」
「いえ、海が好きだから、海で死にたいな、と」
 率直な理由を述べた。
「へえ」
 あごを触りながら、彼が反応する。
「まあいいや。少し話そうか。……あいにくの天気だけれども」
 そう提案すると、彼はゆっくりと空中から降りてきて、私の隣に座った。
 幽霊と会話なんて、私が始めてなんじゃないだろうか。



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