6: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 00:54:02.25 ID:r7ry1KnL0
麻雀は国民的な人気競技である。
高校生大会とはいえ、全国大会の様子はかなり細に入った中継放送がなされていた。
おそらく父は、咲の様子をテレビ越しに見て決断を下したのだろう、と照は推測した。
7: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 00:55:23.22 ID:r7ry1KnL0
そうこうするうちに二人は、最初の目的地に辿りついた。
「――」
8: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 00:57:34.66 ID:r7ry1KnL0
大会の日程がどうの、エースとしての立場がどうのと理屈をつけて、この場所を忌避し続けていた。
逃避以外のなにものでもない行為だった。
その気になれば今日のように、多少時期を外してでも訪れることは、いくらでも可能だったはずだ。
9: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 00:59:22.46 ID:r7ry1KnL0
目的地に対して当然なされるべき「作業」をこなす間、今度は咲がじっと立ち尽くして、照の背中を見つめてきた。
気にしないふりをしながら、照は作業を黙々とこなしていく。
一段落ついたところで、パンと手を鳴らして目を瞑った。
10: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 01:00:26.72 ID:r7ry1KnL0
「行こう、って」
「咲の方の、目的地に」
11: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 01:01:53.28 ID:r7ry1KnL0
「あったね、お年玉麻雀」
「あれってさ、今思い返してみるとひどいと思わない? いやまあ、子供心にもひどいと思ったからこそ、麻雀嫌いになっちゃったんだけど」
12: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 01:04:14.86 ID:i9yboldt0
「だ、だよねー。大人げないよねー」
「でも咲、気付いてた? あなたが巻き上げられたお年玉って、実はそっくりそのまま、咲のところに返ってきてるんだよ?」
13: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 01:06:22.69 ID:i9yboldt0
――なるほど、そういう覚え方をしているのか。
消沈する咲を横目で見やりながら、照は考える。
十分間の沈黙と祈りは、自分の中のなにかを吹っ切らせてくれた。
14: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 01:07:40.73 ID:i9yboldt0
釈然としない思いに軽く首を振っていると、咲が瞼をわずかに伏せた。
「おとうさんと、おかあさん」
15: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 01:09:32.89 ID:i9yboldt0
強引に言葉を遮る照に対して、しかし咲は引き下がらなかった。
「違う。違うよ、おねえちゃん。おねえちゃんは悪くなんてない」
16: ◆VslBbv84R2[saga]
2014/05/01(木) 01:11:03.44 ID:i9yboldt0
そしてついに、その時がやってきた。
「さあ」
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