64: ◆tcMEv3/XvI[saga]
2014/05/24(土) 22:01:51.58 ID:bM5mbd6Ho
  
  
 #5# 
  
  
 #深夜。懐中電灯の明かりで、丸く縁取られた視界。 
  それ以外は全くの暗闇である。風が一切なく、季節外れの蒸し暑い空気が淀む。 
  枯葉を踏んで、男は階段を上り切った。○×神社が、朝とは違っておぞましい雰囲気で佇んでいる。 
  1つの影が鳥居付近でうずくまっている。 
  
  
 幼馴染「誰か倒れてるぞ」 
  
 男「血まみれじゃないか! 何があった!!」 
  
 友「『妖怪』に撃たれた……そこの竹箒を取れ……」 
  
 男「くそッ! 血が止まらない、救急車を呼んでくれ!!」 
  
 幼馴染「私たちは電話を持ってない! ……最寄りの民家まで走って40分はかかる。当然、この田舎じゃ公衆電話も90分先の国道沿いのラブホ前だ!!」 
  
 友「……で、話は聞いてたか? 竹箒だ。血が流れ過ぎた……祠の前に輸血バッグがある。持ってきてくれ、俺はしばらく寝るぞ……」 
  
 男「待て! 寝るな! きっとそれはヤバい!!」 
  
 幼馴染「……いや、彼の言葉に従おう。輸血バッグが祠の前。で、竹箒が何だったっけ」 
  
 男「よく冷静でいられるね」 
  
 幼馴染「君も大概だよ」 
  
  
 ―――――――――――――――――――――――――――――――。 
  
  
 #れいむさまの祠 
  一面にお符の張られた、木造の不気味な、小さな祠がある。 
  道中常に誰かに見られているような不快感があり、だがそれが事実であると直感した。 
  祠の前に輸血バッグはないが、何か花が置いてある。 
  竹箒をその場に落し、花を確認する。 
  
  
 男「白いカーネーション……母の日か……」 
  
 幼馴染「白いものは、死別した母へ送る花らしい」 
  
 男「ああ……僕の母は死んでいる。誂えたように合致した境遇と現状……」 
  
 幼馴染「何か聞こえないかい?」 
  
  
 がちゃり。がちゃり。がちゃり。 
 遠い音。金属音は、甲冑がうごめくもののように聞こえた。 
 思わず、音の鳴る方向へと懐中電灯を向けた。 
 案の定、西洋風の甲冑がそこに立っていた。 
 だがしかし、その姿には頭が無かった。首から上が無く、断面が闇に溶けている。 
  
  
 甲冑「ざ……」 
  
 男「や、やぁ……ジョギングにしては不便な格好だが……」 
  
 幼馴染「見て分からないのか? 明らかに異質、会話が通じるとはとても……」 
  
 甲冑「ザナドゥ……」 
  
 男「!?」 
  
 甲冑「ザナドゥ!!」 
  
  
 甲冑がこちらへ向かって突進してきた。 
 くそ、やってられるか。 
 僕は急いで竹箒とカーネーションを拾い上げ、幼馴染の手をとって走り出した。 
 なぜだかこの花が重要な気がした。 
  
   
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