過去ログ - 阿良々木暦「ゆきほエンジェル」
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/09(金) 20:22:02.07 ID:OHJpcaUT0

そこは、世のしがらみや僕の些細な悩みなどどうでもよくなるような場所だった。

正直に言おう。
僕はこれほどの怨嗟と憎悪、その他マイナスの感情に渦巻いた場所を見たことがない。
ここにいるだけで精神が崩壊してもおかしくはない、と言っても決して過言ではない。
その証拠に、萩原もここに入るなり小さく悲鳴をあげた程だ。
先程、電話先で千石が何処となく元気がなかったのは僕から電話がかかってきたから、ではないのだろう。
そう、千石の仕事場は何というか、正に修羅場、と形容すべき気迫に満ちていたのである。

アシスタントを務めるスタッフさんたちは皆女性だったが、全員が全員、女性としての嗜みを一切合切捨てた様子で仕事に取り組んでいる。
具体的に記述するのは彼女たちの名誉のためにやめておくとしよう。

来訪した僕と萩原を血走った目で一瞥しただけで仕事に戻る彼女たちの気迫は、それこそいち軍隊のそれに匹敵するだろう、と僕は確信した。

週刊連載で人気漫画家ともなると〆切は命よりも大切なのだろう。
その辺りは僕も芸能界の掟として経験したことがあるから理解できる。
一度〆切を守れなかった者に次はないのだ。
あったとしても、足元を見られるのは明白。
人気だからこそ、足を止めるわけには行かない苦しさはアイドルも同じだ。

「いらっしゃいませ……暦さん、雪歩ちゃん」

千石も例外ではなく、何処かやつれ、メジャーリーガーかと突っ込みを入れたくなるほど真っ黒になった隈と虚ろな瞳で、ふらふらと身体を揺らしながら僕たちを迎えてくれた。
髪型こそ菊地のようなさっぱりとしたショートカットに変わっていたものの、小さな身体つきは五年前から変わっていなかったので今にも倒れそうだ。

やはり巨匠……と言うか漫画家はベレー帽を被らなけらばならない、という鉄の掟でもあるのだろうか。
千石もベレー帽を被っていた。



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