2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:26:25.64 ID:46jCR3Qqo
「一年か」
改めて口にしてみる。
一年間、プロデューサーの下でアイドル活動をこなしてきた。
で、その仕事の出来は我ながら良い線行ってると思う。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:37:38.50 ID:46jCR3Qqo
だけど、それじゃ足りなかった。
「雪歩と一緒なら良かったんですけど」
プロデューサーに一度だけ零したことがある。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:41:39.74 ID:46jCR3Qqo
「雪歩、ストーカー被害にあってるらしいんだ」
プロデューサーはボクにこっそりと言った。
訊くと他のアイドルには話していなくて、知っているのはプロデューサー、社長、小鳥さんだけらしい。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:45:14.56 ID:46jCR3Qqo
男性恐怖症の人の気持ちはボクには分からない。
だけど、想像してみて、すごく嫌な気持ちになった。
ただでさえ苦手なのにストーキングされて、しかもそれを忘れてアイドルなんて絶対できっこない。
雪歩はそれから一月経たないうちにアイドルを諦めて、郊外の親戚の家に引っ越した。
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:48:07.99 ID:46jCR3Qqo
電話が鳴るのは怖いから、と、雪歩は引っ越し先の住所を教えてくれた。
この一年間、ボクらは手紙で連絡を取り合った。
雪歩の手紙の内容は家のことだったり、その日にあった楽しい事とか、偶に詩を書いて寄こしてくれた。
真ちゃん、デビューおめでとう。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:48:50.97 ID:46jCR3Qqo
この間テレビで観たよ、とか、CD何回も聴いてるよ、とか。
雪歩がそういう手紙をくれる度、ボクは悲しくなった。
悲しくなる度、ありがとうと返事を書いた。
本当なら雪歩も――
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:50:37.20 ID:46jCR3Qqo
ふと窓を見ると灰色の建物の影はなくなっていて、
クレヨンで描いたような緑色と水色が楽しげに灯っていた。
一年前の春、雪歩もこの車窓から同じ景色を見たんだろうな。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:51:11.49 ID:46jCR3Qqo
「東京で見る雪はこれが最後だね」
寂しそうに呟く雪歩の髪に、ちらちらと季節外れの雪がくっついた。
それを払ってあげると、雪歩はくすぐったそうに首をすくめた。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:52:19.18 ID:46jCR3Qqo
空間を破って、発車を知らせる警笛が鳴った。
「乗らなきゃ」
雪歩の肩をとんと押した。雪歩は慌てて電車に乗り込んだ。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/05/12(月) 10:53:46.49 ID:46jCR3Qqo
終点を知らせるアナウンスが車内に流れて、ボクははっと顔を上げた。
電車が減速して、慣性がボクの背中をシートから離した。
電車を降りると春のうららかな空気と、雪歩のお父さんがボクを迎えてくれた。
17Res/5.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。