46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/07(月) 18:36:47.94 ID:1qEy49aIo
夜、木材置き場に赴くと、すでにムロイはケイの専用席に収まっていてこちらに手を振った。
昼間考え続けていたことを聞こうとして、しかしなかなか言葉にならないまま持て余しているうちにムロイは何かを差し出してきた。
「いいのが撮れたよ」
デジタルカメラの画面には星雲と呼ばれるものだろうか、渦を巻くミルクのような靄と、薄ぼんやり照らされる岩石質やガス質の星と、それから何もない闇などが映っていた。
黒い画面を指さして訊ねると、望遠鏡の精度が悪くて上手く撮れなかったものだという。
「でもなんかいいだろ?」
それらの写真を見てケイが思ったのはもちろん綺麗だなあということだったが、それにもまして強い印象なのは孤独だなあということだった。
写真の中には連星と呼ばれるものや衛星を伴ったものもあるのだが、広大な空間の中にぽつんと浮かんでいることに対する心許なさというのか、胸の内に生じるきりきりとした痛みが拭い取れない。
だが星は何も言わない。結晶化した強靭だけがそこにある。
その一部が音として漏れ聞こえたのが星の声なのかもしれない。
孤独に軋む悲鳴ではなくただ単に孤独であることの報告。
きっとだから自分はそれに惹かれてやまないのだ。
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