47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/07(月) 18:37:22.37 ID:1qEy49aIo
装置をポケットから取り出してスイッチを入れた。
星の声が流れ出す。星の声ではないかもしれない異音が流れ出す。
ケイには空白に聞こえ、他の人にはそうは聞こえないであろうノイズ。
カメラをリュックサックにしまい込みながら「今夜は特によく聞こえるねえ」とムロイは言った。
48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/07(月) 18:37:56.88 ID:1qEy49aIo
ケイははたと口を止めた。
深く考えて出した言葉ではなかった。
ただ、ムロイもスズと同じなのか気になったのだ。
星のような在り方をしているのか、それを聞きたかったのだ。
49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/07(月) 18:38:38.94 ID:1qEy49aIo
虫の声と装置の音の中、ムロイはそう言ってどっかりと丸太に座り込んだ。
空に手を伸ばしてからからと笑う。
「せめて触れたらいいんだけどねえ。その点では化石と触れ合える恐竜博士が羨ましいよ」
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2014/07/07(月) 18:39:18.82 ID:1qEy49aIo
……
次の日の体育の時間、担当の教員は自由に活動してよろしいと宣言した。
学期の終わりも近くこなすべき課程も片付いたのでというのがその理由らしい。
51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/07(月) 18:39:52.45 ID:1qEy49aIo
自分という外殻の過敏を思う。
人の視線への感度の過ぎたる高さを思う。
要はそれなのだ。他人の視線ではない。それを感じる自分の問題なのだ。
自分を縛り、刺し、傷つけるのは自分だ。自分の中の虚栄心がそれをする。
52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/07(月) 18:40:20.07 ID:1qEy49aIo
「……なに?」
ケイはかすれ声でその少女を振り仰ぐ。
スズはともすれば冷酷にさえ見える瞳でこちらを見下ろしていた。
その口が開く。
53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/07(月) 18:40:54.52 ID:1qEy49aIo
いきなりなんなんだろう、とかろうじて思った。
ぐわんぐわんと波打つ頭蓋の中でそれを考えられたのは一種の奇跡だったかもしれない。
自分は何かスズの気に障るようなことでもしたのだろうか。
なんでいきなりぼくを責めるんだろう。
54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/08(火) 20:52:45.40 ID:HFfF56Bmo
「君はなんでそんなに強いの」
口から漏れた言葉が震えるのは怯えのせいかもしれないし怒りのせいかもしれない。
ケイがそのとき感じていたのは単に胸が痛むということだけだった。
ひどく傷む。
55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/08(火) 20:53:25.41 ID:HFfF56Bmo
言葉を重ねながら頭の隅では理解している。
この先に待つのは後悔と自己嫌悪だ。
だがそれでも胸が痛いのだ。
56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/08(火) 20:53:51.89 ID:HFfF56Bmo
誰かがシュートを決めたのかまばらな歓声が聞こえた。
バットがボールを捉えたいい音がした。
ケイたち二人の周りでは音はしなかった。
57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/08(火) 20:54:24.27 ID:HFfF56Bmo
残りの授業を受けずに帰ったので母に叱られた。
心配と不安の入り混じった声での叱責だった。
なんでそんなことしたの。あんたはそういう子じゃないでしょ。
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