7: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:08:31.61 ID:2jYFvZQ+0
野次馬も入り、暴行の嵐が始まりました。白い陶器のようだった肌が血と汗と泥で汚れていきます。
男があの子の腹を蹴り抜きました。
女があの子の足を踏みつけました。
気絶しそうになったあの子に、老人が冷たい水を浴びせました。
8: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:09:13.84 ID:2jYFvZQ+0
「あ、ぐ、ああ、あ」
指先は妙な方向にひしゃげ、血濡れで震えるあの子を見て彼女はだんだんと吐き気を催すようになりました。
「どこかに片付けてくれない?」
9: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:10:08.48 ID:2jYFvZQ+0
それからというもの、彼女は世界一の美しい女性としてもてはやされ、愛されるようになりました。
彼女の笑顔は花が咲き誇ったようで、彼女の声は小鳥のさえずりのようだと口々に褒め称えられるようになりました。
「ふふ、うふふ」
10: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:11:32.04 ID:2jYFvZQ+0
ある朝のことです。彼女は朝日を浴びに屋上へと出ました。
柔らかな日差しが彼女の髪を輝かせ、花のにおいが優しく彼女をつつみこみます。
うーんと伸びをしますとなにやらあくびが出てきましたので、口に手を当ててふわあ、と可愛らしく息を吸い込みました。
11: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:13:39.27 ID:2jYFvZQ+0
あの子は誰かに脱がされたのか、生まれたままの姿で立っていました。
頬は腫れ上がり、美しかった髪は無残に切られ、過去の美しさをとどめていませんでした。
指先は紫色に変色し、太ももからは血が流れていました。
お尻や背中には無数に蚯蚓腫れが走り、足にも青あざがいくつもありました。
12: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:15:00.60 ID:2jYFvZQ+0
あの子は死んでしまいました。しかし、彼女はまったく悲しくありませんでした。
どうやって屋上までたどりついたのかは分かりませんが、あの子はもうこの世にはいません。
名実共に、彼女は世界で最も美しい女性になったのです。
彼女の気分は爽快でした。
13: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:15:42.41 ID:2jYFvZQ+0
子供に出会いました。子供はわんわんと泣いていました。泣くというより悲鳴のように聞こえました。
彼女は何故泣いているのか話しかけましたが、子供は彼女に見向きもせず泣くばかりでした。
14: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:16:28.33 ID:2jYFvZQ+0
あの子のお母さんに出会いました。あの子のお母さんはあの子の部屋で首を吊って、ぶらぶらと揺れていました。
足元には、震えてミミズのように這った字で遺書が残されていました。
15: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:17:16.80 ID:2jYFvZQ+0
『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』
『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』
『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』
『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』
『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』『ごめんなさい』
16: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:18:48.26 ID:2jYFvZQ+0
「どういうこと、どういうことよ!!!」
彼女は座り込んで叫びました。誰も彼女のことを見ていませんでした。彼女以外誰一人として、自らの命を絶たなかったものはいませんでした。
ぽつぽつと雨が降り出しました。雨は血を吸って赤く染まっていきました。
17: ◆AzQd5RQbFxWA
2014/05/27(火) 17:20:54.32 ID:2jYFvZQ+0
あの子は世界中から愛されていました。
あの子は世界中から嫌われるようになりました。
そしてあの子は死にました。
あの子が死んで呪いは解け、世界は思い出したのです。
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