21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/29(木) 20:00:32.06 ID:jPxrNCQ30
「鷺沢、一旦外に出るぞ!」
「え、で、でも比奈さんが!」
「大丈夫だ、僕を信じろ!」
鷺沢はそれでも荒木が心配なようで、苦渋の表情でわかりました、と応えてくれた。
恐らく、今の鷺沢の心境はこれが半ば自分の責任だという自責の念が渦巻いているのだろう。
僕は鷺沢の手を取り、古書の館を後にしたのだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「悪いな、荒木……」
鷺沢に借りた鍵で書庫の鍵を締めた。中に放置する形になってしまった荒木に謝罪し、息を切らす鷺沢と共に年季の入った扉を背もたれにする。
「プロデューサーさん、あ、あれは……」
なんですか、と続けようも息が途切れ、目で訴える鷺沢に僕は答えた。
「怪異、だ……」
「怪異……?」
「文字通り、怪しく人とは異なるものだ……妖怪や物の怪が近いかな」
「そんな……っ!」
鷺沢ほどの読書家なら葛飾北斎の絵や雨月物語の訳くらい目にしたことはある筈だ。
ふと、鷺沢の視線が僕の左手に向いているのに気付いた。
その先には、先程の心渡がある。
「……鷺沢、いきなりだけど僕は人間じゃない」
心渡を影に仕舞って見せる。
たて続けに起こる手品のような現象と信じ難い光景に、鷺沢は恐怖に近い表情を浮かべていた。
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