20: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:16:10.10 ID:jYhc2yQnO
一目見て、土御門は硬直した。
巨大ディスプレイの映画で見るような怪物。
3DCG技術で飛び出てきたような化け物。
禍々しい赤々とした瞳、巨大な体躯、異質な姿形。
21: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:16:43.63 ID:jYhc2yQnO
土御門が硬直したのは、何も、その怪物への恐怖だけではない。
その目の前で尻餅をついている、青とも黒ともとれる髪色をした少女の存在が、彼の目線を釘付けにしていた。
なんだか見覚えのある風貌だった。
いや、知りえているはずはない。間違いなく初対面だが、その少女はどこか、彼が最も守るべき少女と似ているような気がしたのだ。
22: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:17:24.36 ID:jYhc2yQnO
蜘蛛のような体躯をしたガストレアの前脚の一つが、鎌のようになって少女へと襲い掛かった。
鎌がその首を切り落とす前に、土御門は片手で少女を抱えて前転し受身をとる。
標的が、彼へと変わる。
23: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:18:35.47 ID:jYhc2yQnO
土御門は戦慄していた。
遺伝子の書き換えによって、ヒトはガストレア化する。
ということは、目の前にいる怪物も、元々はどこかで暮らしていた人間なのだ。子供か大人か老人かはわからない。だけど、確実な、人類の敵。
少女を地面に降ろし、離れていろと忠告する。少女はとてとてと走っていき、十数メートルほど離れた地点の電信柱の裏側に隠れた。
24: ◆2BIJ5nUpEk[sagd]
2014/06/01(日) 23:19:28.85 ID:jYhc2yQnO
土御門は右手を拳銃のグリップから懐の折紙へ移動させつつ、思考する。
怪物との距離は、既に十メートルを切っている。
(そもそも、オレのチカラが奴に有効なのかどうか。それさえもわからないままこんなところで行使するのは、リスクが高すぎる)
25: ◆2BIJ5nUpEk[sage]
2014/06/01(日) 23:20:45.04 ID:jYhc2yQnO
土御門は一つ舌打ちをして、懐から4つの小さな何かを取り出した。五センチほどの円筒状のケースに入っているそれは、赤、青、黒、白。四種の色でそれぞれ折られた色紙だ。
土御門は一度手を振るうだけでそれらを四方へ配置した。ガストレアは反応しないらしい。
「……、」
26: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:21:35.39 ID:jYhc2yQnO
四色のシキガミを配置した彼は、ガストレアを正面に据えて右手を掲げた。
そして、その右手を、思い切り地面にたたきつける。
地脈と龍脈を支配する。
血液のように循環した大地の膨大なチカラ。その末端を握った土御門は、その場で得たエネルギーを媒介に、それを発動する。
27: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:22:26.18 ID:jYhc2yQnO
集気三叉。
大地に存在する地脈や龍脈を、一人の人間の血液の循環に喩え、その膨大なエネルギーを吸収する。
大地を一つの演算装置に。
大地に流れるエネルギーを魔力に。
28: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:23:52.31 ID:jYhc2yQnO
土御門の掌を中心に、摩訶不思議な魔方陣が展開する。4つのシキガミがそれぞれの色に発光し、その全てが術者である土御門へ、電力送電のように集約されてゆく。
ガストレアは約五メートルの位置で静止していた。
そして、前脚の二本を大きく振りかぶっていた。
29: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:25:14.16 ID:jYhc2yQnO
呪文の完成とともに、何もない空間から、一メートルほどの水球が現出し、怪物のハラワタを貫き、飛散してゆく。
そして同時に、土御門の視界が眩む。
連続での魔術使用による、大きな拒絶反応。
体中が悲鳴を上げ、激痛に膝を折りながら、土御門は上半身を捻って後方を確認した。
30: ◆2BIJ5nUpEk[saga]
2014/06/01(日) 23:27:20.90 ID:jYhc2yQnO
本日分は終わりです。たくさん書いたつもりでも、投下は一瞬で終わるから困る。
次回更新日は未定です
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