過去ログ - 食蜂「好きって言わせてみせるわぁ」その4
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14:乾杯 ◆ziwzYr641k[saga]
2014/06/10(火) 02:51:51.97 ID:igNzDGpD0
「まずは論より証拠だな。――――あぁ、お前たち、音声は拾えているかな? つけてくれたまえ」

一瞬何を言っているのかわからず、上条が怪訝な顔をしたが、すぐに察した。
男の仲間たちに何らかの作業を指示しているのだ。
はたして、木原が手をかざしてから数秒後、巨大なモニターにいくつもの波形や数値が表示された。
苦痛に身を縮めていた上条が目を見張った。

「……これ、は」

「予想通り、脳波にかなりの乱れがあるようだね。並々ならぬ負荷がかかっているようだ」

木原のにやにや笑いを見て、上条がデータの正体を察した。

「……まさか……食蜂の」

「いかにも、彼女が自らに施したプロテクトの解析がやっと終わったようだ。
今は記憶の残滓を一つ一つ選り分けている段階かな。囲碁でたとえるなら、ヨセというやつだ」

囲碁や将棋にたいして詳しくない上条も、その言葉の持つ意味合いくらいは知っていた。
作業の仕上げ。詰めの部分。
洗脳が完了するまで、もう一刻の猶予もないのだと知る。

「あの子は早くに親を亡くし、親戚たちに疎まれ、学園都市に流れつくことでやっと安息の場を得た。
我々が手厚く保護したからこそだ」

何が安息の場だ。何が保護だ。お前たちは、アイツをより深く傷つけただけじゃねえか。
声なき心の弾劾が上条の歯を軋ませる。

「彼女の能力を解析することによって、我々の研究は大きく飛躍し、洗脳装置という成果を得た。
かくいうわたしも、密かに彼女を実の娘のように思っていたものだ」

「……っ、どの口が、ぬかしやがる!」

「それなのに、彼女はある時期を境に自らが関わる実験に疑問を持ってしまった。
不幸なことだ。些細な疑念など気に留めず、ただ我々に従順でさえいてくれれば。
何の不安も怒りも感じず、何不自由なく暮らしていけたものを」

上条が堪えるようにきつく目蓋を閉じる。
旅行に行こうと誘ったときの彼女の喜びよう。
食蜂の置かれていた境遇は、自分の想像を遥かに超えていた。
こんな大人たちに囲まれていたからこそ、彼女はああいう性格になった。
ああいう性格でいなければ、食蜂操祈は自分の心さえ保つことができなかったのだ。


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